昨春観光ホテル開業 車椅子でグランピング みやこやグループ
愛知県犬山市で住宅型有料老人ホームやデイサービス、グループホームなどを運営するみやこやグループでは、1年前より新事業として観光ホテルの運営に乗り出している。介護事業のノウハウを活かして「高齢者にやさしいホテル」として差別化を図っていく考えだ。日比野良太郎社長に話を聞いた。

日比野良太郎社長
県の研修施設を購入して運営
――ホテルについて教えてください
日比野 名称は「HOTELレイクサイド入鹿」。客室数は25です。入鹿池という大きな人造湖のほとりに建っており、新緑・紅葉など四季折々の景観の美しさが魅力です。また、有名テーマパークの「明治村」もすぐ近くにあります。
――ホテル事業を始めた経緯は
日比野 新型コロナウイルス感染症の影響などで利用者が減少し、閉鎖されていた県の研修施設を購入しました。県は解体を検討していましたが、解体には億単位の費用がかかります。「同じ費用をかけるなら再生すべき」と考えました。
購入後は、全館防水工事や、絨毯・シャンデリアの交換などのリノベーションを実施しました。また、新たにグランピング施設を建設しています。

湖畔のグランピング施設
――介護事業とホテル事業の連携は
日比野 運営するホームやデイの利用者は、すでに外出レクリエーションなどでホテルを何度も訪れ、食事や入浴を楽しんでいます。この結果、サポートが必要な高齢者へのホテル側の対応力も向上しています。こうした経験を活かし、今後は「高齢者にやさしいホテル」を前面に打ち出していきたいと考えています。
グランピング施設はホテル本体と湖畔の間の斜面に設けていますが、現在、ホテル本体を挟んで反対側にある駐車場の前に新たに1棟建設中です。駐車場から段差なく移動できるので、車椅子を利用している人でもクランピングを楽しめます。
介護予防教室の体験会場に活用 高齢者が通う場に
――ほかに高齢者の利用促進に向けて検討していることはありますか
日比野 地域で行われている介護予防などが目的の体操教室の会場として活用してもらうことを想定しています。犬山市では、現在市内4ヵ所で民間企業に委託する形で介護予防教室を実施しており、5月17日に市民向けの説明会・体験会がホテルで行われます。市内には大人数が集まって体操できる屋内スペースがほとんどありません。当ホテルには畳敷きの大広間があるので「万が一、高齢者が転倒しても安心」ということで、市から「会場として使いたい」と声がかかりました。
――それをどのように高齢者の利用に結びつけていきますか
日比野 体操教室を行っている会場ごとに参加者の「OB会」があり、自主的に集まって体操をしています。このOB会の合同会を定期的にホテルで行うことを提案しようと考えています。大勢で集まれば楽しいだけでなく、地域を越えた新たなコミュニティも生まれます。現在、体操教室で使用しているカラオケ機器と同じものがホテルにもありますので、環境としては問題ありません。
ホテルですから、合同会の前後に食事、入浴、宿泊ができます。バスでの送迎も可能です。町会館や公民館を利用するよりも、一人ひとりのニーズにあった楽しみ方を提供できると思います。
――一般の高齢者観光客については
日比野 もちろん、そちらも積極的に呼びかけていきます。体操教室の進行担当者は音楽健康指導士という民間資格を保有しているのですが、ホテルスタッフがその資格を取ることも考えています。そうすれば、雨などで観光ができない場合にホテル内で体操を楽しんでもらえます。また定期的に宿泊し、体操教室に参加することで、健康維持・介護予防につながることが期待できます。

ホテル外観