【上海福祉の今】高齢者の消費活動調査/王青氏
8割が在宅希望/ニーズが多様化
中国消費者協会は先月、「2022年高齢者消費に関する調査研究報告」を発表した。需要と供給の両面から調査し、高齢者向けサービスと高齢者の消費活動における課題解決を目的としている。
調査対象エリアは、経済発展や高齢化率、消費習慣などを考慮した上で、南通・大連・上海・瀋陽・重慶・北京・青島など10都市が選定された。対象者は、「消費者である高齢者とその家族」と「サービス提供者である介護施設や医療機関の従業員」とし、アンケート形式で調査を行った。消費者側のアンケート結果から、次の5点が明らかになった。
①在宅高齢者
在宅の高齢者からは、食事サービスなどの家事全般に関するサービスへの関心度が最も高く、そのほか社交・リハビリ・デイサービスへのニーズも高い。しかし、実際には消費行動に結びついている割合は低かった。
②施設入居者
施設に入居中の高齢者は、医療サービスの質を求める傾向が強く、次いでレクリエーションの充実が多かった。衣食住の基本的なニーズが満たされると、医療やレクリエーション、娯楽などのサービスに対する需要が高まることを示している。また、寝返り支援機器、マッサージチェア、介護ベッド、入浴補助用具、紙おむつなどの福祉用具関連の需要も高い。
③アクティブシニア
アクティブシニア層の消費活動は活発である。比較的所得水準が高く、高学歴で、健康状態が良く、多趣味などの理由があげられる。文化活動やファッション、電子機器などに惜しみなくお金を使う傾向がある。特に健康に対して意識が高く、サプリメントなどの健康食品への認知度も高い。
④8割が在宅希望
高齢者のうち約8割が在宅介護を第一に考えている。「料金がリーズナブルでサービスが良ければ入居しても良い」と回答したのは%にとどまった。
また、約半数の高齢者が「子供家族と同居したい」と考えており、施設入居への不安は依然として払拭されていない。その理由として、「サービスが良くない」「料金が高すぎる」「信頼できない」などがあがった。住み慣れた環境で老後を過ごしたい気持ちが強い。
⑤消費活動でのトラブル
約6割の高齢者がモノやサービスを購入した際に、トラブルに遭遇したことがある。例えば、効果効能・性能といった品質の意図的な誇張や偽の割引など。高齢者の権利を守るために必要な指導や支援がまだ不十分であることがわかる。
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サービス提供者側の回答からは、サービスの品質や料金などの全国共通の基準設定や社会保障制度の整備を求める声が多かった。
王 青氏
日中福祉プランニング代表
中国上海市出身。大阪市立大学経済学部卒業後、アジア太平洋トレードセンター(ATC)入社。大阪市、朝日新聞、ATCの3社で設立した福祉関係の常設展示場「高齢者総合生活提案館ATCエイジレスセンター」に所属し、広く「福祉」に関わる。2002年からフリー。上海市民政局や上海市障がい者連合会をはじめ、政府機関や民間企業関係者などの幅広い人脈を活かしながら、市場調査・現地視察・人材研修・事業マッチング・取材対応など、両国を結ぶ介護福祉コーディネーターとして活動中。2017年「日中認知症ケア交流プロジェクト」がトヨタ財団国際助成事業に採択。NHKの中国高齢社会特集番組にも制作協力として携わった。