対話型AI、高齢者向けに 富山県内施設で実証

2023年5月28日

対話型AIの研究、ビジネスプロデュースを行うRATH(東京都中央区)は5月より、富山県高岡市の介護施設にて、AIが話し相手となるサービスにより高齢者のQOL向上を図る実証実験を開始した。

 

 
情緒面支援に貢献 QOL向上目指す

 

実証実験では、同社が今年3月に商用向けにリリースした対話型AIの実装を容易にするプラットフォーム「Partner AI Platform」を活用。その機能をデモンストレーションしやすくしたスマートフォンアプリ「Project MAY」を、社会福祉法人Q・O・L福祉会の施設を利用する高齢者に体験してもらう。

 

 

実証実験が行わている社会福祉法人Q・O・L福祉会の施設

 

 

アプリでは、オリジナルキャラクター「日向メイ」とチャットで会話が楽しめる。対話型AIが自由に文章生成することで、さまざまなテーマについて飽きがこない会話ができる。会話を重ねることで利用者のプロファイル情報を取得。それに合わせて会話の内容も変化していく。

 

 

実証実験の第1段階として、AIが話し相手となることにより、高齢者の心身の健康維持に貢献することができるかを検証する。利用者や介護職員からのフィードバックを受けつつ、高齢者にとって対話型AIに求める機能、利用を妨げる要素、などを明らかにしていく。最終的には高齢者のQOL向上に特化したサービス開発につなげる。

 

 

アプリの画面

 

 

実証実験に至る背景には、介護職員が利用者一人ひとりと向き合って話し相手となるのが難しい現状や、コロナ禍によって高齢者のコミュニケーションの機会が減少していることなどがある。高齢者に対話型AIを活用してもらうにあたっては、サービス提供デバイスの選択や、分かりやすいインターフェイス、会話に伴う入出力のあり方などを検証する必要があった。その意義について、Q・O・L福祉会が理解を示したことから実験が実現した。

 

 

原田謙一社長は「現在注目を集めているChatGPTは問題解決に役立てるなど、『機能的価値』を主眼に置いて活用に向けた議論が進んでいる。しかし、高齢者にとっては気軽な話し相手、愚痴の聞き手となることなど、『情緒的価値』が最も求められると考えている」と語る。

 

 

今後さらなる拡張機能として、音声認識、画像認識を連携して健康管理を支援する構想がある。「日本の高齢者介護領域で本当に意義が認められるサービスに育てたい」

 

 

同社は2019年設立。原田社長は楽天銀行の創業やヤフー本体の金融事業立ち上げなどに携わってきた。デジタルマーケティングのトランスコスモスなどを経て、同社を設立した。

 

 

アプリを使用する高齢者

 

 

 

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