【書評】最強のケアチームをつくる/評:浅川澄一氏

中迎聡子著
円窓社
1,980円(税込)

「ちょうどいい塩梅」の介護がいい
著者は鹿児島市と近隣3ヵ所でデイサービスや訪問介護、小規模多機能型居宅介護、住宅型有料老人ホームなどを手掛ける。老人ホームで3年勤務したが、硬直した運営に耐えられず、自身で会社「いろ葉」を立ち上げ、今春20周年を迎えた。
創業時のデイサービス名は「宅老所いろ葉」。「自宅」の「宅」を掲げ、親身なケアを謳う宅老所。20数年前に各地で広がり、そして今、新世代がその流儀をたっぷりと伝えてくれる。
本人はどう思っているのか。どうして欲しいのか。何よりも老いを丸ごと認め、普段の暮らしを続けられるように支える。言うは易しだが、いろ葉では徹底して深めた。
本人本位の事例には一瞬驚くことも。歩けない人はゴソゴソ這って移動してもらうという。すぐに車いすを持ち出さない。介助者が楽をしてはならないからだ。
リビングから畳の自室に半身を横たえて寝込んでしまう人も。安心できる場所を探した結果だから、そのまま見守る。
安全第一、管理主導の施設介護ではありえないことだ。その人に最適な「ちょうどいい塩梅」を見つけるのが介護だと説く。その通りだろう。
「看取り」という用語をスタッフは使わない。「出会ったときから看取りが始まっている。死につながっている」からだ。思わず膝を打つ。
食べたがらない人に、口内ケアをじっくり続け飴玉を頬張らせると、食事を摂るようになることも。心の奥の訴えを把握することから始める。そのためにはスタッフの普段の心構えが重要だ。
社員旅行と称して道中の飛行機内で、リハビリパンツを付けてもらう。高齢者と同じ体験を味わい、本人の気持ちを共有する。血圧と脈圧の測定は体に触れる。看護師だけでなく全職員があたり、「体が奏でる音楽を聴く」。いい表現だ。
出勤時間が前日に知らされる勤務体制を採る。その日のお年寄りの体調に合わせて動くのがスタッフだから、異なるのが当たり前という。
小規模多機能の施設で昨年2月、コロナウイルスのクラスターが発生。マスクを外してのグループ分け方式で乗り切る。ここでも、生きることを楽しんだ。軽いノリの根底に「まとも」がある。小規模、多機能、地域密着というかつての宅老所のスローガンが本書全体を貫いている。
評:ジャーナリスト 浅川澄一氏










