【住まい×介護×医療展2023 セミナーレポート】厚生労働省 老健局高齢者支援課 介護業務効率化・生産性向上推進室 秋山仁室長補佐
介護現場における生産性向上について
優れた事業所の表彰制度を検討
厚生労働省では、2018年頃より介護現場におけるロボットなどのテクノロジー活用推進に取り組んできた。一般的に、ICT活用は「『ムリ・ムダ・ムラ』の排除」が目的とされるが、それだけでは不十分で、①スタッフの業務負担の軽減、②介護サービスの質の向上――につなげていかなければならない。
先般成立した改正介護保険法では、都道府県に対して介護事業所の生産性向上に資する取り組みを促進するよう努力を求める旨の規定が新設された。都道府県の役割を法令上明確化することで、地域単位での取り組みを広げていくことが狙いだ。
また昨年末には、全世代型社会保障構築本部からの指示のもと「介護職員の働く環境改善に向けた政策パッケージ」を取りまとめている。具体的な施策として大きく8項目が示されているが、中でも介護事業者へのさまざまな支援メニューを一括して適切な支援につなぐワンストップ窓口を各都道府県に設置するのが大きなポイント。
さらに、介護職員が働きやすい職場環境づくりを行っている事例の普及促進を目的に、優れた事業所に対する内閣総理大臣表彰制度も計画している。
各事業所ができることから取り組みを 小さな成功体験の積み重ねが重要
23年4月20日より本格運用が始まっているのが「ケアプランデータ連携システム」。現状では、ケアマネジャーと介護事業者とのやり取りはファックスが主となっている。そのやり取りをデジタル化することにより、労働時間の短縮が図れ、1事業所当たり年間約74万円のコスト削減効果があると試算される。また、それにより生じた時間を利用者宅訪問やアセスメントなどの時間に当てることで、サービス品質の向上にもつながることが期待される。
さらにファックスの内容を転記する際のミスが報酬の不正請求と判断される可能性があることが介護事業者にとってはプレッシャーとなっている。それから解放されるだけでも大きなメリットがあるといえるだろう。
ひと口にICT活用といっても多くのメニューがあるので、各介護事業者が取り組みやすい所から着手していくことが望ましい。ICT活用については、反対する声も少なくないと思うが、小さな成功体験を積み重ねていくことが理解の促進につながるだろう。
また、ICTは「導入すれば終わり」ではない。単に「システムを利用する」ことを目的とするのではなく、組織やプロセスなども変革させていくことが求められる。

厚生労働省 老健局高齢者支援課
介護業務効率化・生産性向上推進室
秋山仁室長補佐