「支援」や「サポート」 本人がしたいことを手助けする/女優・介護士・看護師 北原佐和子氏
ヘルパー2級の資格取得後、認知症専門施設で勤務を始めたのが2004年。この夏で丸17年間、認知症に対応してきたことにある。
その間、当たり前のように、認知症の方への支援またはサポート、寄り添うなどの言葉を使ってきた。
だが昨年から認知症専門クリニックに勤務する中で、院長に「支援とかサポートといった言葉は上目線ではないか」と指摘を受けている。長年使っていると、何の疑問も持たずに、「支援」や「サポート」という言葉をするっと発してしまう。
ここにきて、大切な友人が悪性腫瘍を患い、連日、疼痛と闘いながら治療に励み、必死で命と向き合っている。その友人をどのように支援したらいいか、どんなサポートが必要なのか、またはどんな寄り添いが必要なのかということを仲間と相談するうちに、今のこのテーマは、認知症の受診者や、家族に対しても同じだということに気づかされた。
本人は「支援とかサポートとか、同情なんて欲しくない」と感じているかもしれない。認知症当事者の人から、「認知症カフェって何?そんな名前が付いていたら私は行きたくないよ。逆に避ける」と言われたことがあったからだ。
私たちが良かれと思ってしていることは、実は当事者を不快にしていた。そんなことを感じたことがあった。そう考えると当事者の話や思いをきちんと聞く、しっかり向き合うことを、おろそかにしてはいけない。
実は、それらは社会においての人と人とのつながりが重要で、認知症の人とか、悪性疾患を持つ人とか、そんなことが問題ではないのかもしれない。
当クリニックの木之下院長は、「目の前の人と向き合い、したいことを手助けする」。例えば、駅で具合が悪く階段を昇れない人がいたら、手を添えて一緒に階段を昇るのか、救急車両が必要な状況なのか、その人の「今必要なこと」を手助けする。
認知症の人だからと、差別的な発想を無くして、人と人の関わり合いの中で、今、目の前にいる方と向き合う。人とのつながりの大切さに目を向けて、いつでも手を差し伸べられる自分でいたいと思う。
女優・介護士・看護師 北原佐和子氏
1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」