2024年2月14日号  6面 掲載

念願のケアマネ業務 利用者と過ごす時間の尊さ/女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

2024年2月17日

 

昨年12月よりグループホームでケアマネジャーの業務をスタートした。5年前にケアマネの資格を取得したが医療の知識の必要性を感じ、勢い余った感じで准看護師の資格を取得した。以来看護師業務に就いていたがこの度念願のケアマネ業務に就くこととなった。新しい環境に飛び込むのは勇気がいるが、自分を奮い立たせて念願の仕事に踏み込んでみた。ところがどっこい(懐かしい昭和の死語)、現場で利用者とともに過ごす時間は私に喜びを与えてくれる。
 

早速、入所半年のMさんの様子が気になり私の心を離さない。トイレに行き部屋に戻ったと同時にまたトイレへ。また、キルトの手提げに自分の洋服などを入れて玄関に佇む。こんにちは、と声をかけても表情が変わることなく、「どうも」と返される。なぜここに居るのか聞くと「家族が迎えに来るから」と表情硬く答える。スタッフがMさんを誘って散歩に行くと言うので同行した。すると散歩道中手をつなぎ離さない。
 

そういえば前にも似た体験があった。その方は、日中に玄関から静かに出て行かれ、翌朝自宅近くで発見された。この後から散歩中は私たちの手を強く握るようになった。夜中ずっとさまよい歩いた時の不安感が払拭できなくて、このような態度になるのか。散歩から帰ったMさんがキルト作品を作り、手提げも自分の手作りであることを話してくれた。私のカーディガンのほつれを見つけて、「アイロンを使って熱で少し縮ませてかがれば綺麗になるのよ」と教えてくれた。「私の住まいは東北で雪深いところ。最近は雪も減ったけど。お父さんと冬はスキーに行くのが恒例なの。お父さんはとても優しいよ」と笑顔で話してくれた。勤務のたびにMさんを誘い散歩に行く。みるみる表情が変わり、挨拶すると「あら久しぶり。元気だった?」と満面の笑みで返してくれるようになった。少しずつ不安感が和らいでいるのか、出会って1ヵ月ほどで玄関に佇むこともなくなり、トイレの頻度も今では日に数える程度に減少した。
 

次のテーマはベッドでの傾眠時に上履きを脱ぐこと。なぜ脱がないのだろう……。面倒だからか、家族が来たらすぐに帰れるようにだろうか。そんなに意味なく面倒だから?ただ忘れているのか。

 

 

 

女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」

 

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