2024年5月15日号 7面 掲載
食事レクリエーション 自分で握ったお寿司の味は格別/女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

お寿司。どんなレクリエーションよりも盛り上がるのが昼食のお寿司の準備だ。
準備といっても、施設ですること。握ってあるお寿司をお皿に盛るとか、作るとなれば、手巻き寿司とかを想像するのではないかと思う。だがそんな次元ではなく、お寿司を握るのだ!
全員が1つの大きなテーブルを囲んで座っている。テーブルにはお寿司のネタとなる、イカ、ボイルエビ、コハダ、はまち、ネギトロ、玉子が置いてある。利用者一人ひとりに手袋を渡すと、目と気持ちは寿司ネタに釘付けで、手袋どころではない。ある人は親指部分に人差し指が入っている。手袋の指先など見ていない。気持ちが急いていつまでも手袋に指が入らず、挙句の果てはイライラして素手で握りそうな気配。皆さん、手袋をはめて今か今かと待機。私も年齢を重ねる中で、お寿司の美味しさを実感しつつも、自分で握るのは想像したことがなかった。だが我がGHの利用者は自分でお寿司を握っちゃう、寿司職人に変身するのだ!
さてここからが争奪戦。ボールに入っているシャリを手際よく、全員に取り分けるのがスタッフの役割。手袋をした手を水で湿らせて、一人ひとりの手にしゃもじでシャリを置いていく。
このシャリを握るのが、寿司職人の如く上手いのだ。最近では回転寿司が定番となり、お寿司を握る様子が見えないことが多い。だが、利用者の多くは、寿司屋といえばカウンターが定番の昭和時代の面々。寿司職人に食べたいネタを告げる。目の前でシャリを握りその上にネタをのせて目の前にポンと置き、それを頂く。そう何度となくお寿司を握る様子を見てきたからこそのなせるわざなのだろう。手際よく形を作りネタを自分で選び、乗せ、お皿に並べていく。そして早くシャリを手に頂戴と次々手が出てくる。このペースについていくのがやっとの私。
それにしても皆さん、生き生きとしてお寿司を握るのが楽しいという様子。私たちなりに一生懸命どんなレクリエーションなら楽しんでもらえるのだろう、と考えてみるが、お寿司の時ほど生き生きとした表情に出会ったことがない。自分たちの握ったお寿司を食べるのも至福の喜びなのだと思う。これまた全員が完食なのだ。

女優・介護士・看護師 北原佐和子氏
1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」










