2024年7月10日号 15面 掲載
【書評】「認知症」9人の名医/評:浅川澄一氏

東田勉著
ブックマン社
2,200円(税込)

通説より信念に拘る認知症医療
著者の東田勉さんは認知症医療について長年取材を重ねてきた熟達の介護ライターである。9人の医師に改めてインタビューした。
東京都内をはじめ岐阜県土岐市、千葉県市川市、埼玉県川越市、鹿児島市など全国の診療所などを訪ね歩いてまとめた。権威のある大団体や大学病院とは縁のない、地域密着の医師が大半だ。
各地に認知症疾患医療センターはあるが、認知症医療は歴史が浅く手探り状態。それだけに独自の診療手法は傾聴に値する。東田さんは薬への造詣が深く、繰り出す質問は患者や生活者の目線。一問一答の場面には緊張感があふれる。
よりよい医療への目指す頂上は同じでも、登り口はさまざま。著者が名医の条件として挙げるのは、アリセプトなど抗認知症薬の増量規定を定めた標準治療に疑問を抱いているかが出発点だ。増量規定による副作用を避けるため、少量投与に踏み切る医者もいた。その意を受けて厚労省は適量投与へ方針転換したが、現場で十分には浸透していない。
著者は、「介護問題は認知症に尽き、認知症問題は薬害にある」と確信を抱く。抗認知症薬のそれぞれについて、登場する医師たちは具体的に自身の見解を述べる。医師としての在り様が浮き彫りになり、認知症に向かう姿勢がよく分かる。
薬だけがテーマではない。「なぜ医者になったのか」と生い立ちを問う。介護家族とのかかわり方も尋ねる。介護職との連携ぶりも聞き出す。注目される診断法、コウノメソッドの実践者もいて、その中身も詳細に紹介される。
9人の医師は、掲載順に西村知香、長谷川嘉哉、森田洋之、上田諭、白土綾佳、松野晋太郎、平山貴久、平川亘、岸川雄介の各氏である。ケアマネジャーの有資格者や30歳過ぎて医師免許を取得した人も複数いて、かなりユニーク。普通の医師像とは違う。
その中で印象的だったのは、著者が「認知症医療の神髄」と称える平川医師の発言だ。ある抗認知症薬について、「増量規定を守り過量投与の結果、幾人もの死者が出ているに違いない」と著者はその発言内容を解説する。衝撃の事実だ。
巻末では、著名な在宅医の長尾和宏さんが、9人それぞれへの応援コメントを寄せており、登場者たちの人柄、実績への理解がより深まる。
評:ジャーナリスト 浅川澄一氏










