2025年7月9日号  7面 掲載

【介護経営者カンファレンスセミナーレポート】「共感と対話」で人材活躍 女性経営者が語る職場改革

2025年7月11日

 

620日に開催された「介護経営者カンファレンス」。セミナーレポート第2回は、「介護DX」及び「ダイバーシティ」という、現在の法人運営からは切り離せないテーマを扱った座談会の様子を紹介する。第一線で活躍する経営者の思考の核心に切り込んだ。

 

 

柔軟なキャリア支援成長向けフォローも

 

2040年には57万人の介護人材が不足するとされる介護業界では、特に女性の比率が高いこともあり、出産、子育て、介護などライフイベントに対応できる職場づくりを進めていくことが重要視されている。登壇者は人材不足に対応するためにもダイバーシティは大前提とした。その上で多様な人材が公平にキャリアアップしていくには「個人の評価を行える仕組みがあること」「職場の職員の理解があること」が必要との意見が出た。

 

ニチイホールディングスの黒木悦子常務執行役員は、大規模組織においても現場の声を重視する風土づくりを進め、「現場の課題解決」を第一にテクノロジー活用を推進する「GENBA SMILE Lab」などの施策で職場環境の改善を実現。

 

 

ニチイホールディングス 黒木悦子常務執行役員

 

 

一方、ミアヘルサホールディングスの青木文恵社長は、従業員の約8割を女性が占める職場環境を活かし、復職支援や柔軟な働き方を叶える制度を設計。育児と仕事の両立支援や、パートから正社員、さらには管理職への登用制度を整備し、「働き続けられる介護現場」を目指してきた。

 

ミアヘルサホールディングス 青木文恵社長

 

 

エフビー介護サービスの栁澤美穂社長は、外国人人材の採用を推進。外国籍スタッフへの日本語教育、資格取得支援を行い、文化的背景の違いにも配慮した定着支援を徹底。「長期戦力としての外国人人材を育成したい」と語る。

 

エフビー介護サービス 栁澤美穂社長

 

 

アイケアの宇田川智子社長は、中小企業の利点を活かした高校生採用に注力。「つながるプロジェクト」と称し、地元企業や学校と連携して職業理解を促進。面接不要で採用するスタイルに加え、メンター制度で定着率60%を維持している。

 

アイケア 宇田川智子社長

 

 

やさしい手の香取千枝取締役執行役員は「挑戦と失敗を許容する文化が成長の土台」だと語った。2025年は新卒・中途・外国人合わせて305名の採用を計画しており、多様な人材の活用を経営戦略の中心に据えている。そうした状況でも一人ひとりの成長を丁寧にフォローしていくために、ICTAIを活用した人材データ管理による個別最適化されたキャリア支援に力を注ぐ。

 

 

やさしい手 香取千枝取締役執行役員

 

 

座談会では、今後の展望についても活発な意見が交わされた。黒木氏は「社員の笑顔が利用者の笑顔につながる」と、風土改革による職場環境の改善を継続する意向を示した。青木氏は「女性の共感力を活かした現場づくり」をさらに深め、より柔軟な働き方と働きがいの両立を目指す。

 

栁澤氏は、外国人人材の活躍の場を広げることと、業界全体の賃金水準向上を訴えた。宇田川氏は「地域に根ざした企業が若者の育成に責任を持つべき」と語り、教育機関との連携強化の必要性に言及。香取氏は「ICTを活用した透明性の高い現場こそが、人材の信頼と成長を生む」とし、デジタルと人の融合を強調した。

 

5人の女性経営者が示した、「共感」と「対話」、「柔軟性」と「科学的支援」による人材育成と職場改革は、外国人材、障害者、元気高齢者が活躍する「ダイバーシティ」実現にほかならない。

 

 

 

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