2025年7月23日号 1面 掲載
SOMPO中期戦略 DX×地域最適化に力 在宅介護も改革進む
SOMPOケア(東京都品川区)は2030年を見据え、「守るべき事業」と「拡大を図る事業」を明確に区分しながら超高齢社会に対応する新たな介護モデルの構築を目指す。鷲見隆充社長に中期の事業戦略について聞いた。

SOMPOケア 鷲見隆充社長CEO
同社は現在、介護サービスの提供を担う「オペレーター事業」、他社との連携・支援を行う「プラットフォーム事業」、新規領域への挑戦を含む「ウェルビーイング事業」の三本柱の事業構成を敷いている。中でも25都道府県に1000事業所、8.5万人の利用者を抱える「オペレーター事業」は、在宅・施設ともに供給力の向上を図り、より強固な事業基盤構築を目指す分野と位置づけている。
一方、30年に向けた成長戦略の中核を担うのが「プラットフォーム事業」であり、「食事、ICT、教育、コンサルティングなどの分野で培った知見を他社にも展開していく」と鷲見社長は語る。
深刻化する人材不足に対応すべく「DDA(デジタル・データ・AI)」の開発・導入も進めている。同社はこれまで取り組んできた介護職の業務標準化とテクノロジー導入により、年間億円の生産性向上を実現。全て職員の処遇改善に充当した。
現在は「フェーズ2」に移行し、看護職や事務職も含めた業務の標準化とDDAの開発を進行中。「フェーズ3」では、DDAの実装により未病・予防や介護予測も可能なモデルの構築を目指す。「足元では、想定していたよりも早いスピードで人材確保が困難になっている。27年度には現行の人員配置基準上限である3対0.9を目指し、1400人規模の人員減があってもサービス品質を維持できる体制を整備したい」
在宅介護分野でも改革を開始した。現在はエリアを分けた15拠点で、移動距離や援助時間、混合介護などの課題を可視化し改善を図っている。
テクノロジー活用においては、「見える介護」「予測する介護(仮称)」「AI活用」の3軸でDDAを検討・開発中。中でもAIケアプランについては、従来の半分の時間で作成可能と見込む。
住友商事と共同開発した業務DXツール「FIKAIGO」は、25年8月までに同社の介護付きホーム全290施設に導入予定。シフト・勤怠管理や書類作成など、間接業務の最大90%の削減が想定される。
外付けサービスの提供については「併設施設のみならず、地域住民へのサービス提供が求められる時代」と、居宅への訪問を兼務する職員体制を一層整えていく方針を示した。囲い込みへの懸念については、「利用者には他事業所の情報も示したうえで選択を尊重している」と述べた。
また、都市部と地方では生活様式や人口構成が異なることを踏まえ、「画一的な介護モデルでは限界がある。『住まい』という概念を再定義し、地域ごとに最適化された介護戦略が必要」との認識を示した。
今後は、センサーデータ活用や保険外事業などを含む「人を介さないサービスの開発・導入」の展開を視野に、「プライベートサービス」による保険外収益の拡大にも力を入れる。通院付き添いなどのニーズを受け、24年度には保険外のみで7億円の過去最高収益を上げている。
オペレーターとしての基盤を守りながら、地域包括ケアの視点とテクノロジーを掛け合わせて拡張を図る。業界を牽引するSOMPOケアは、「介護の標準」の再定義に取り組む。
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インド人人材初受入 育成1期生6名が来日
SOMPOケアは、インド国家技能開発公社の子会社であるNSDC International Limitedとの協業により、インドで育成した介護人材6名が初来日し、7月2日付で同社に入社したと発表。約3週間の導入研修を経て、7月26日から各施設へ配属される予定だ。
来日した6名は、両社が2024年8月より開始したインド人人材の育成・受け入れプロジェクトの1期生。現地では約9ヵ月にわたり日本式介護の理解や実践的な介護用語、実際の施設を模した設備の中での実技実習などの教育を受けた。
今後も段階的に人材育成を進め、年間60名規模での受け入れを目指す方針。フォロー研修やキャリア支援の強化を通じて定着を図り、多様性を活かした質の高い介護サービスの提供を継続していく。

インド人人材6名が来日、配属










