2025年8月13日号 11面 掲載
家族とのコミュニケーション/女優・介護士・看護師 北原佐和子氏

「些細な会話の積み重ね」が信頼に
ヘルパー2級(初任者研修)の資格を取得して、介護に関わるようになり、今年で20年を迎える。多くの利用者さん、そしてご家族と出逢ってきた。
その日々の中で忘れることができないご家族の言葉がある。デイサービスで勤務していたときのできごと。利用者さんが体調を崩したり、時には骨折したりして入院した、と連絡が入ると、私たちは「病院では不穏な気持ちにならずにしっかり治療に励んでいるだろうか……」と心配な気持ちでいる。元気に退院してデイサービスに来られたときは、ほっと胸をなでおろし、素晴らしい生還力!とみんなで喜び迎える。
時に寂しい連絡もある。あの時は寂しいお知らせをもらい、最後のご挨拶にお伺いした。
突然の訪問に、ご迷惑ではないかと思ったが、暖かく迎えてくださった。ご霊前に手を合わせている私の背に、ご家族が「母は大勢いるうちのひとりではなかったのですね」とおっしゃった。
その言葉には考えさせられた。ご家族はそのような気持ちを持っていたのかと。それまでは言いたいことも遠慮して言えない気持ちだったのかもしれない。もっとご家族とコミュニケーションをとっていたならば、と反省したできごとだった。
それからは送迎時に付き添うときは、意識してご家族に今日のデイサービスでの様子を伝えるようにした。
「食事中に隣で食事をしている方が目の前のティッシュに手を伸ばしていたのですが、手が届かない様子を見てティッシュを取って下さっていました。いつも優しく周りと接して下さっています。私たちの目の届かないところにも配慮下さって助かっています」と、どんなに些細なできごとでも伝えてご家族とのコミュニケーションをとっていた。
このやり取りが繰り返されていくと、今度はご家族側から自宅での様子を話してくださる。
「デイサービスへ行くときの支度や靴を履くなどがスムーズにいかなくて、その様子にイラついてしまうんです」とご家族の思いをお話くださる時もある。
そんな時は「私たちがバトンタッチしてやりますから安心してください」と伝える。そのときのご家族のほっとした表情も忘れることができないできごとだ。

女優・介護士・看護師 北原佐和子氏
1964年3月19日埼玉生まれ。
1982年歌手としてデビュー。その後、映画・ドラマ・舞台を中心に活動。その傍ら、介護に興味を持ち、2005年にヘルパー2級資格を取得、福祉現場を12年余り経験。14年に介護福祉士、16年にはケアマネジャー取得。「いのちと心の朗読会」を小中学校や病院などで開催している。著書に「女優が実践した魔法の声掛け」「ケアマネ女優の実践ノート」










