2025年11月5日号  1面 掲載

【コラム】介より始めよ

2025年11月5日

松本清張が1960年に新聞で連載を開始した長編推理小説『砂の器』。74年に制作された最初の映画は社会現象となった。

 

作中には、ハンセン病を患う父とその子への差別が描かれている。遺伝病、前世の業、凶悪な伝染病などといったはなはだしい偏見により、法の下で強制隔離を行った時代。ハンセン病の父が、生き別れ天才音楽家となった息子について「知らない」と叫ぶシーンがある。一目会いたいと毎日願いながら、自身と切り離された息子の幸せを祈る、父の思いだ。

 

認知症も、精神疾患患者として自宅敷地内で閉じ込める「私宅監置」が合法だった時代がある。昨年施行された認知症基本法は、こうした差別・偏見の歴史の先に成っている。介護施設・医療機関や家族の学びが歴史を変えてきたのだろうと、介護の日を前にして思う。共生社会を目指し、さらなる正しい理解の広がりに期待したい。

 

 

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