2025年10月8日号 終面 掲載
高齢者住宅協会・芳井敬一会長/シニアのニーズ追求 創意工夫で付加価値を
2025年6月、一般社団法人高齢者住宅協会(東京都千代田区)新会長に大和ハウス工業会長の芳井敬一氏が就任した。同氏に、会長就任にあたっての思いや高齢者住宅を取り巻く問題意識を語ってもらった。

芳井敬一会長
――新会長就任に際する思いを聞かせてください
芳井 「住まい」は「着るもの」「食べるもの」と同じくらい、人生の基本。若年層から高年齢層にかけて、最適な住まいの形は変化する。制度上、介護施設や高齢者向け住宅の類型は数多くあるが、〝高齢者向け〞は他世代向けの住まいと比べて特別なものではない。重要なことは、地域や住む人に応じて、生活をどう支えていくかと創意工夫をすることだ。
――介護施設の創意工夫を行うには独特の難しさもありますね
芳井 高齢者の状態は、人によってまちまちで、加速度的に重度化する人もいる。サービス構築は一筋縄ではいかず、制度上の規制など特有の難しさがあることも理解している。
だが事業者にとって、消費者ニーズにいかに向き合っていけるかがすべて。現実には国の補助金や制度の枠組みに沿って運営せざるをえない面もあるが、今後はいかに「枠にとらわれない新しい発想」を持てるかだろう。例えば、当社が展開しているホテル事業においても「高齢者が快適に利用できるのだろうか?」と感じることは多々ある。当然工夫はされているが、マニュアルや決められたことの範囲にとどまってしまうケースもあり、まだ工夫の余地があるように思う。
サービスを加算で評価してもらうという視点だけではなく、私達が提供する安心安全な住まいを高齢者に選んでほしいという思いを持つことで、消費者のニーズ・願望に応える付加価値を生み出すことができるのではないか。予防医学的なサービスなどが想定される。
多少時間がかかっても「人が行うべきこと」が確かに存在する。「この人にはこう対応したら良い」と具体的に想定できれば、自然と創意工夫が生まれ、そのサービスは価値を持つはずだ。それを収益化できることが理想的な形だろう。
――高齢者住宅のサービス、制度など広範に見直していこうという流れがあります。問題意識を教えてください
芳井 入居紹介料の高騰や不当な営業手法などの一連の問題について大変憂慮している。事業者側は信頼を得て、「選ばれて住んでいただく」立場。消費者は実情を知らずに利用してしまうので、一刻も早い是正を望む。当協会としても、引き続き国の取り組みに協力していきたい。