2026年1月7日号 3面 掲載
【特集◇特養の分岐点④】委託料と看取り率に相関/若竹大寿会 竹田雄馬常務理事


若竹大寿会 竹田雄馬常務理事
コロナ禍に約93%まで下がった当法人の特養の平均稼働率は、入院を減らす取り組みとショートステイの活用によって25年に99.8%まで回復した。入院による空床率は2.7%から1.2%に減少し、平均入院期間は23日から12.5日に減少。入院による減収は22年時点で年間1億円超であったものが、今年度は約4920万円まで縮小する見込み。法人全体では年間約6259万円の増収となる見通しだ。入院を減らす取り組みは業績として返ってくる。社会福祉法人は「先行投資」として、特養の医療提供体制を整えるべきだろう。
当法人では配置医師が最大限機能を発揮できるよう、過去の調査や自法人での検証を踏まえ、▽診療体制の整備
▽専門科診療
▽ACP・看取り
▽感染対策
▽研修
▽横浜市立大学との共同研究
――の6点に取り組んだ。
配置医師との契約内容を見直し委託料の水準を上げた。さらに主に在宅医療機関との契約で「夜間」「緊急時」対応を明確に契約に組み込んだ。
現行制度では配置医師の医療行為は介護報酬内で評価されているという建前だが、実際の報酬は施設からの委託料が主で、金額は裁量に委ねられている。診療報酬上、配置医師の医療行為に対する評価や責任が不明確なのが実情。
横浜市立大学の調査では、横浜市内の特養における配置医師の委託料は、中央値.平均値ともに1ベッド当たり月額約3000円程度だが、施設間で大きなばらつきがみられる。このような水準では、十分な対応を継続的に行える医師は確保しにくい。
また委託料が高い施設ほど、施設内での看取り率が高いという正の相関が認められた。国立がん研究センター中央病院が22年に行った在宅医207名を対象としたアンケート調査では、「特養の医療に必要なこと」として「診療報酬の改善」との回答が最多であり、93%の医師がこれに同意していた。

当法人では現状、非常勤の配置医師が多く専門領域に偏りがあることから、法人内外の専門医が訪問診療に来る体制を構築した。委託料は配置医師同様に高水準とし、全施設で精神科医.皮膚科医の定期回診を実施。精神科医定期的療養指導加算は全施設で取得している。
長期的には特養の医療提供体制に関する制度改正が不可欠だ。特定施設のように訪問診療を行うことで施設入居時等医学総合管理料のような月額包括報酬が得られる仕組みが必要だと考える。現行でも「がん末期」「看取り」などで加算はあるものの、出来高評価では不十分だ。
制度が整えば、国全体の医療費抑制にもつながる可能性がある。全国の特養で発生する年間入院医療費を、若竹大寿会の医療体制強化前の数値をもとに試算すると約2293億円となる。当法人の取り組みを全国の特養で実施できれば、年間約1150億円規模の入院医療費削減が見込まれる。
◇◆◇
稼働率UPに!SS活用術
社会福祉法人若竹大寿会は、入院による空床を最小限に抑え、ショートステイを高い効率で運用することで、特養の実質稼働率を高水準で維持している。特養「わかたけ南」(定員150人)では、併設ショートステイ10床に加え、本入居者の入院.退去で生じた空床も即座にショートとして活用。「1床空いたら、その日のうちに1床埋める」(山口美智子施設長)というダブルカウント運用を徹底してきた。同施設は100%超の稼働を継続している。
利用は1〜2泊から1週間程度までが中心で、長期希望者には本入居への移行を促す。
高稼働を支えるのは生活相談員の調整力だ。日常的にケアマネジャーと連携し、ショート利用が見込まれる世帯を把握。空床発生時には即時連絡できる体制を整えた。常時2〜3件のキャンセル待ちを確保し、延長可能な利用者には空床発生と同時に延長を提案する。
あわせて、入院時に空床をショート利用に回すことを入居者の契約時に説明し、都度の家族確認を省くことでタイムラグを防いでいる。
課題も残る。竹田常務理事は「ショートでも配置医師が医療対応を担うが、かかりつけ医との関係で対応が難しい場合がある」と指摘。発熱時に帰宅対応となるケースもあるという。今後は医師との連携や受け入れ時のアセスメントを見直し、医療対応体制の整理を進める方針だ。(⑤に続く)









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