2026年5月20日号 12面 掲載
勤続10年ごとに100万円 働けなくても65歳まで給与補償
不動産から介護に業態転換し現在、関西で19棟の高齢者住宅を運営するのがケントホールディングス(大阪市)だ。2025年にはM&Aで運営棟数を一気に倍増させている。現在注力していることや、今後の成長戦略などについて福井勝利社長に聞いた。

ケントホールディングス 福井勝利社長
低価格帯に拘り幅広く受け入れ
――会社の概要を教えてください
福井 1998年に不動産会社として創業しました。2011年に新規事業として子会社ケントメディカルケアを立ち上げ、「寿福の郷」のブランドで高齢者住宅の運営を開始しました。18年に不動産関連事業を譲渡して現在は介護事業1本です。20年に友愛、25年にカインドライフと2社をM&Aで取得し、現在ホールディングス傘下には3つの介護事業会社があります。高齢者住宅は大阪府・奈良県・京都府で合計19棟を運営しています。
――運営する高齢者住宅の特徴は
福井 M&Aで取得した物件も多いので、一概には言えない部分もありますが、「手頃な価格」が最も大きな特徴です。月額費用は介護保険の自己負担別で
概ね11万円程度です。生活保護受給者も受け入れています。今後も物件は増やす考えですが、価格帯の軸はぶれることがないようにしていきます。
――認知症対応や医療対応の面では
福井 1つの建物の中で、重度要介護者、認知症の人、医療対応が必要な人などにフロア分けをしています。概ね3棟・150室を1つのロットとして考え、この中でどのような状態になっても生活し続けられる環境を整えています。医療については一部の地域を除いて自社の訪問看護師が対応します。現在の入居者の平均要介護度は4を超えています。
離職防止に有効採用コスト削減
――人材確保の面で取り組んでいることは
福井 以前より給与水準は同業他社に比べても高い水準にしていましたが、それに加えて、3年ほど前から正社員・パートを問わず、勤続10年ごとに1人100万円の一時金を支給しています。これが「もう少し頑張って働こう」というモチベーションにつながり、離職を防いでいま
す。このことは求人広告などでもアピールしています。求職者の反応は非常に良く、人材採用には困っていません。結果的に採用コストを削減できますから、その分、スタッフの処遇改善や入居者が安心・快適に暮らすための投資が可能です。
また、スタッフには、いわゆるシングルマザーが少なくありません。彼女たちの大きな心配事は「もし、自分が働けなくなったら収入がゼロになる。子どもに十分な教育を受けさせることができるだろうか」ということです。そこで、こちらも3年ほど前からですが、保険会社を活用して「病気やケガで働けなくなっても65歳までは給料を満額補償する」という仕組みを導入しました。こうした取り組みを行う会社は珍しいと思います。

「寿福の郷今川」外観(写真はホームページより)
昨年M&Aで運営棟数倍増 滋賀県南部まで進出を検討
――今後の事業展開を教えて下さい
福井 大阪市内から介護事業を始め、奈良盆地の中部、北部、京都府南部へと徐々にエリアを拡大していきました。今後は滋賀県南部ぐらいまで進出を考えています。土地・建物は自社保有が原則です。これまでは1棟50室が開設の目安でしたが、昨今の建築コストの上昇を考え、今後は100室ぐらいまでの規模を想定します。また、満床になったら次のホームを開設する方針のため、必然的に事業拡大のスピードはゆっくりになります。それをカバーするためにも、必要に応じてM&Aを効果的に活用していきます。










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