【介護給付費分科会 論点を見る】夜間人員緩和に異議

2020年12月10日

 

 

 

厚生労働省は、11月9日の社会保障審議会介護給付費分科会において、次期介護報酬改定のポイントとなる

(1)地域包括ケアシステムの推進

(2)自立支援・重度化防止

(3)介護人材の確保・介護現場の革新

(4)制度の安定性・持続可能性の確保

(5)感染症や災害への対応力強化

の5点のうち、(3)、(4)、(5)について議論。計19もの論点について、委員から様々な意見が述べられた。

 

 

人材確保・現場革新

 

 

(3)介護人材の確保・介護現場の革新については、主に

▽介護職員処遇改善加算Ⅳ・Ⅴの廃止

▽特定処遇改善加算のより柔軟な配分を可能とする見直し

▽ICT活用による夜勤職員配置加算の要件緩和および適用対象の拡大、特別養護老人ホームにおける夜間人員配置基準の緩和

などについて議論。

 

「処遇改善加算Ⅳ・Ⅴの廃止」では、一定の経過措置期間を設けた上で廃止する方向案について、委員らよりおおむね了承された。「特定処遇改善加算の見直し」では、より柔軟な配分を可能とする見直しを検討する方向案が提示されたが、複数の委員から「経験や技能のある職員の定着促進といった本来の趣旨に反する」と反対の声も聞かれた。

 

 

 

ICT活用「むしろ負担増に」「エビデンス不足」

 

「ICT活用による夜勤職員配置加算の要件緩和、特養における夜間人員配置基準の緩和」については、見守り機器を導入した場合の夜勤職員配置加算について、見守りセンサーの入所者に占める導入割合の要件を緩和するとともに、全入所者にセンサーを導入した場合の新たな要件区分を設けること、および特養・ショートステイのみでなく介護老人保健施設、介護医療院、グループホームにも適用拡大すること、との方向案を提示。加えて、従来型特養における夜間人員配置基準の緩和を検討することも盛り込んだ。

 

これについては、多くの委員が「反対」「エビデンス不足」と意見。「万能ではないICT導入によって人員配置が薄まれば、むしろ負担増につながる」(伊藤彰久委員・日本労働組合総連合会総合政策推進局生活福祉局長)、「基準緩和ありきの非常に拙速な提案だ」(岡島さおり委員・公益社団法人日本看護協会常任理事)などの批判が挙がった。

 

 

 

 

 

制度の安定性 持続可能性確保

 

(4)制度の安定性・持続可能性の確保については、

▽区分支給限度基準額の計算方法の見直し

▽訪問介護・生活援助の訪問回数が多い利用者への対応見直し

▽サービス付き高齢者向け住宅等における適正な介護サービス提供に向けた自治体による指導徹底

などが議論された。

 

「区分支給限度基準額の計算方法の見直し」では、通所系サービス、小多機および看多機における同一建物減算などの適用に係る公平性の観点から、減算の適用を受ける者の区分支給限度基準額について、適用前の単位数を用いることを検討。同様に、通所系サービスにおいて大規模型の報酬が適用される事業所を利用する者の区分支給限度基準額については、通常規模型の単位数を用いることを検討するとの方向案が提示され、委員らから了承を得た。

 

 

一方、「生活援助の訪問回数が多い利用者への対応見直し」では、運用面の見直しを検討する方向案を提示したが、「利用者の個々の事情を考えることなく一律に廃止することには反対」と複数の委員が異議を唱えた。11月2日に行われた財政制度等審議会財政制度分科会において、財務省は引き続き「軽度者へのサービスの地域支援事業移行」を求めている。こうした現状について鎌田松代委員(公益社団法人認知症の人と家族の会理事)は「到底容認できるものではない」と反対の姿勢を強く示した。

 

 

 

感染症・災害への対応

 

(5)感染症や災害への対応力強化については、

▽各運営基準における感染症対策に向けた取組

▽業務継続に向けた計画等の策定や研修、訓練の実施等

▽災害訓練の実施等に当たって地域住民との連携に努めることを求めた。

 

厚労省は「運営基準に義務として入れていってはどうか。事業者にとって無理がないよう、経過措置なども検討する。必要となる費用は、介護報酬で評価していく」としている。

 

 

 

 

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