有料老人ホームで「リビングラボ」 福祉大学と協働 Plus Fukushi(名古屋市)

2022年1月25日

高齢者施設の運営や介護分野のコンサルティング、商品開発を行うPlus Fukushi(名古屋市)は2021年11月、住宅型有料老人ホーム「グランー彩(いろどり)ー」(同)を開設した。

 

福祉系の大学と連携して作られた同施設は、高齢者向け商品開発の「リビングラボ」としての機能も持ち合わせる。

 

 

Plus Fukushiは2020年に設立。「グランー彩ー」は初の入居施設となる。地上3階建て、居室数は25室、月額費用は家賃、管理費、食事代込みで13万8000~15万8000円となっている。

 

同法人は2021年7月、愛知県の日本福祉大学健康科学研究所と研究協力を推し進めるための合意を結んだ。グランー彩ーにおいても学生とのプロジェクトチームにて、施設コンセプト段階から、設計、インテリアデザインなどにおいて、学生の意見から生まれたアイデアが随所に反映されている。

 

 

施設デザインなどにおいて学生が協力している

 

 

 

内外観は「和モダン」をコンセプトに統一。風呂には間口の広い出窓を設け、露天風呂のような感覚が楽しめ、中庭スペースもある。炭酸泉の足湯も設けられており、利用者はいつでも楽しめる。スタッフユニフォームもオリジナルデザイン。服装と接遇により、入居者は旅館で暮しているような雰囲気を味わえる。

 

施設完成後も大学との連携は継続しており、今後は地域コミュニティとの共生をテーマに、施設入居者と地域住民の交流を促す仕掛けを学生と共同で企画している。

 

 

 

商品開発スペース設置

 

「学生など外部の人が施設に入ることで入居者にとっては社会性の維持につながります」と溝口寛之社長は語る。同施設は大学だけでなく、コンサルティング業の一環で、高齢者向けの商材開発のための「リビングラボ」として活用する。施設の一角には実証実験・商品開発に使用できるスペースが設けられている。

 

 

同社はこれまで、パナソニック製のAI歩行トレーニングロボット「Walk training robo」の開発に携わっており、グランー彩ーにおいてもデータ収集に協力していく。

 

また、メーカーや大学と共同で、センシングとAI技術を用いて、入居者の生活をプランニングする実験も実施する予定だ。

 

 

 

高齢者市場拡大 実証の場必要に

 

高齢者を対象とする事業、商品開発を行う法人は今後も増加することが予測される。ニッセイ基礎研究所の推計では、60歳以上の消費は2012年以降毎年1兆円規模で拡大、2030年には111兆円となる見込みで、家計消費市場全体においても5割を占める(グラフ参照)。

 

 

棒グラフが60歳以上消費額の推計、折れ線グラフが家計消費市場全体に占める60歳以上消費割合(データはニッセイ基礎研究所より)

 

 

 

「例えばファミリーレストランでは高齢者の味覚、好みに合わせたメニュー開発など、今後高齢者向けの商品開発の重要性が増していきます」(溝口社長)。

 

同社ではその開発の場を提供することで、社会に「介護サービス以外の価値」も提供することを目指す。

 

 

 

「研究の現場」職員の意欲に

 

技術・商品開発の最前線に施設が位置することで、そこで生活する入居者と外部の人との交流が生まれ、生活の意欲につながることが期待できる。加えて、職員のモチベーションにも好影響を与える。自分の意見などが最先端の研究に活用される点や、世に出る前の製品を体験できることがやりがいにもなる。

 

「施設の開設には、職員が『かっこいい』『働きたいと思える』ことも目指しました。今回、職員の募集には定員がオーバーになるほど、多くの応募がありました」(溝口社長)。

 

 

溝口 寛之 社長

 

 

 

同社では今後も「グラン」シリーズの施設を開設していく方針。 ブランドを確立した後、5~6年後を目途に海外展開も計画しているという。

 

 

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