介護・福祉の振興団体(後編)【ICT×医療×介護対談】

2022年1月29日

 

 

 

本コラムはアカリエ(横浜市)の髙健一社長による「ICT×医療×介護」をテーマとした特別対談コーナー。

 

第14回目は引き続き介護ロボット・ICTの活用推進などを行う公益社団法人かながわ福祉サービス振興会の得永真人氏、伊東明日香氏との対談。後編ではLIFEやDX化をテーマに語ってもらった。

 

 

 

 

 

伊東 明日香 氏

得永 真人 氏

 

 

 

未来の介護支えるDX化

 

■科学的介護について ――

 

――髙橋 2021年の4月から、科学的介護推進体制加算が制度化していますが、LIFE推進委員会としてはどのように考えていますか。

 

伊東 まだ始まって1年も経っていない制度ではありますが、次の介護保険制度改定で、在宅にLIFEがどのように制度化されていくのか事業者間では話題になっています。LIFEを活用することによりケアの質向上が期待できるという点もありますが、一方で、小さい事業所がLIFEの活用をうまくできずに淘汰されてしまうのではないかと懸念も持っています。 ITに強くはないが非常に良いサービス、丁寧なサービスをしている事業所もたくさんあります。多くの中小事業所でLIFEがしっかり活用できるように支援を行っていく必要性を感じています。

 

得永 10数年前と比べて、ロボット・ICTの活用が当たり前になってきている実感はあります。今年8月の調査では、介護現場のロボット、ICTの活用は2〜3割くらいになっていました。

 

 

 

■介護業界のITリテラシー ――

 

――髙橋 介護業界でもDX化について最近よく言われているように感じます。一方、介護や福祉業界全般でITリテラシーが低いと言われることもありますよね。

 

得永 高いか低いかの判断は何を基準とするかによるので一概に言えませんが、対人援助がメインのサービスですので本来やりたい介護、ケアを中心にやっていると、IT化に力を入れようという気持ちは比較的抑えられてしまうように感じています。

 

伊東 やはり現場は常に忙しく、新しいものを取り入れたりする余裕も少なく、働くスタッフもIT機器に興味があるというより、人が好きで仕事をしている人が多いと思います。 手書きの記録が大変と言いつつも、新しいものを覚えるよりも利用者やご家族と向き合うことに注力している人が多いのではないでしょうか。

 

 

 

■IT化進める次の一手

 

――髙橋 そのようなIT化に抵抗がある事業者へのアプローチは考えていますか。

 

得永 IT導入ありきではなく全体のDX化により、人手不足の解消や職員の処遇改善につながるように考えています。私たちの実証実験のその先の運用により、費用対効果の部分で、DX化の効果について経営層に示していけたらと考えております。 DX化についていけない事業所の一部は、効果的な運営ができず淘汰されていく可能性もあると考えています。現状は人員基準を落とすくらいの戦力となるような強力なICT・ロボットの活用には至っていませんが、人の代わりになるまで活用できれば大きな成果を生むと考えています。 しかしながら、従来の介護観があればあるほど、代替がどこまで進むのかという問題もあります。

 

 

 

■今後の展望

 

――髙橋 今後はどのような活動に注力していきますか。

 

伊東 まずは活用実例をこれからも積み上げていきたいと思います。

 

得永 私たちの活動については介護ロボットメーカーだけではなく、事業者の方々にも伝えていきたいと感じています。 日本の就業人口が減少している中、IT 化・D X 化というのは「その一助になる」というレベルではなく、日本の労働を持続可能にする上で避けて通れない変化だと思っています。我々を通じて、介護ロボット、ICTの効果的な活用事例を知り、普及啓発のきっかけになればと考えています。

 

 

 

アカリエヘルスケアカンパニー 髙橋 健一 社長

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