事業計画の立て方② 「運営方針」リーダーが自分の言葉で/スターコンサルティンググループ 糠谷和弘氏
前回は、事業計画を立てる際のポイントをお伝えしました。大事なポイントは、以下の5つでした。
①目標設定
具体化、数値化する
②KPI設定
目標を達成する上での〝指標〞を決めておく
③運営条件設定
組織やサービスの〝良い状態〞を分析する
④絞り込み
施設長として複数のテーマを追いかけていても、現場にはすべて見せず〝大事なテーマ〞だけを伝える
⑤アクションプラン設定
何をするのかを明確にし、それらがしっかりとなされているかの「管理方法」を決めておく
ここまでできたら、次は「伝え方の工夫」です。皆さんの法人では「経営方針発表会」のようなイベントはありますでしょうか。経営トップ、運営トップが、職員の皆さんに経営方針や年度目標を伝える場です。 表彰式を同時に行って、職員が明るく前向きになれるように工夫したり、金融機関や地域の有力者を招いて実施する法人もあります。最近は、感染リスクがあるため、オンラインでされているケースが多いかもしれません。
しかし、法人単位の発表会では、施設に限定した目標や行動計画などを伝えるには不十分だと思います。できればあなたが主催者となって、施設単位で「運営方針発表会」を実施しましょう。運営方針発表会は、下記の3つがポイントとなります。
また、ここ2年は、新型コロナウイルス感染症のため、かなり厳しい現場運営を強いられたと思います。今もそれが続いているところもあると思います。現場の苦労に対する労いの言葉や、功労者に対する感謝の言葉も大事です。目標の話に移る前に、具体的なエピソードも交えながら、感謝や労いを伝えると良いでしょう。
さて、経営方針書、運営方針書は、作成したらそれで終わりではありません。達成しなくては意味がありませんから、1年間、継続して活用するようにしましょう。例えば、千葉県のある法人(ユニット型特養運営)では、方針書に「年間会議・イベントカレンダー」を入れて、以下のような場面で活用しています。
■運営方針書の活用場面
①役職者会議(役職者のみ参加)
「運営方針書」をもとに、目標に対する進捗状況を確認し、達成状況が芳しくなければ、しっかりと議論して、その後の行動計画を見直しています。
②運営会議(正職員と一部のパートが参加)
全員に「運営方針書」を持参してもらい、目標と行動計画のページ、カレンダーを見ながら、前月の成果と反省、次月の目標と具体的指示をし、方針書にメモしてもらうようにしています。
③個人面談(正職員対象)
この法人では、正職員を対象に年に4回、個別面談を実施しています。面談といっても、15分程度の短いものですが、「運営方針書」をもとに個々の取り組み状況を確認してアドバイスしたり、成果やうまくいったことを褒めることを徹底しており、面談開始以降、目標に対する取り組みが強化されたそうです。それだけでなく、職員定着率が上がり、介護福祉士やケアマネジャーの受験者も増えました。
■書き換えも重要
期の途中で、外部環境が変わったり、運営状況に大きな変化があるなど、目標を見直さざるを得ないときもあります。その際は、見直しをし、書き換えをすることも大事です。 またそのときには、できれば臨時の運営方針発表会を実施し、再度、いま置かれている状況や目標を自分の言葉で伝えるようにしましょう。
糠谷 和弘 氏
代表コンサルタント
㈱スターコンサルティンググループ 介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設帳&リーダーの教科書(PHP)」などがある。