人材紹介使わず新卒採用 ブランディング奏功SNS・HPで

2023年3月30日

 

 

公益財団法人介護労働安定センター(東京都荒川区)は1月26日、賛助会員交流会として講演「介護事業所のブランディングのヒント~人材確保と利用者確保~」を開催した。

 

登壇したのは、自身も四肢麻痺の障害を持ち、訪問介護事業所を運営するでぃぐにてぃ(同新宿区)の吉田真一社長。そして「マッチョ介護士」で知られるビジョナリー(名古屋市)の丹羽悠介社長。両者が独自の人材確保戦略について語った。

 

 

 

離職率200%からES向上にカジ

 

第一部で講演した吉田社長は、現在職員数が15名規模でありながら、新卒4名(2022年度入社)の採用実績を持つ。これまでに人材紹介会社を使用したことは1度もないという。

 

しかし、吉田社長は創業期を振り返り、「5人採用して10人辞めるという離職率200%の時期もあった。『世界いち気持ちいい介護』をビジョンに掲げる一方、職員からは『気持ちよくない』という声があがっていた」と赤裸々に話した。残ってくれた職員と徹底的に話し合い、社長に対する不満も全て聞き出した結果、ES向上路線に舵を切った。

 

 

まずは教育・評価制度を構築。OJT期間を3ヵ月用意し、メンター制度を採用した。多面評価制度や研修手当なども導入し、職員が成長できる仕組みを拡充。また、有給全取得や「カフェ手当」「鍼灸制度」といったユニークな福利厚生も整備した。

 

採用時には、会社の良い面も悪い面も開示するRJP(Realistic job preview)の手法を取り入れ、入社後とのギャップを少なくして早期退職を防止。主にSNS・HPから20~30代の若年層を積極的に採用している。HPは約100万円を投じて作り込み、会社に興味を持った人が現場見学できる「でぃぐツアー」を予約できるページを設けるなど工夫。SNSはTwitterやInstagramを活用している。

 

「素晴らしい事業所でも、現代社会ではSNS・WEBで発信していないと、ないのと同じ」と吉田社長。文面よりも写真と動画で会社の中身を見えるようにし、特に経営者と職員の顔を全面に出して思いを伝えることがポイントと語った。

 

 

でぃぐにてぃ
吉田真一社長

 

 

 

 

求人応募300件超 人物像を「言語化」

 

 

第二部では訪問介護・障害者グループホームなど20拠点を展開するHIDAMARIGROUPのビジョナリーより丹羽社長が登壇。

 

「マッチョ介護士」でメディアで話題の同社は、会社のブランディングをするにあたり、「言語化」を重要視しているという。理念・方向性を言語化することはもちろん、ビジョン実現にあたり必要な人物像・どのような人材を評価するかを言語化。さらに「教育/育成」「評価/称賛」といったそれぞれの言葉の意味の違いなども職員と話し合い、認識にズレが生じないよう言語化している。

 

 

「『誰でもいいから採用する』から脱却し、人物像を明確化する必要がある」と丹羽社長。そこで、どんな人と一緒に働きたいかを職員と言葉に落とし込んでいった。既に介護を経験している限られた人材ではなく、「20代の同年代の若者で、現在は介護に興味のない人たち」を集めたいと方向性を固め、その人たちが情報収集をしているSNSで発信活動をすることにした。いかにその人たちの興味を引く「きっかけ」を作るかを考えた結果、みんなが憧れる存在であり、視覚的にインパクトがあるマッチョに注目し、積極採用に至った。

 

「彼らに“ 刺さる”よう『日本一マッチョが多い介護の会社』というキャッチコピーを考えた。彼らが働きやすい仕組みづくりをすることも重要。フィットネス実業団を結成し、24時間無料でジム利用できる制度・部活制度などの福利厚生も充実させている」(丹羽社長)。

 

 

ここ2年の年間求人応募件数は300件に及ぶという。「ブランディングは泥臭いもの。職員を巻き込んで考える時間をきちんと割き、本気で向き合っていく必要がある」と語った。

 

 

ビジョナリー
丹羽悠介社長

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