空き家バンク運営 社協と士業団体連携 福岡市

2023年3月31日

 

 

福岡市社会福祉協議会は一般社団法人古家空家調査連絡会(以下・連絡会:福岡市)と協働で、空き家オーナーと活用したい人をマッチングする社会貢献型空き家バンク事業を2016年より実施している。

 

 

 

ネットワーク活用、一気通貫で支援に

 

 

福岡市社協は高齢者に対して、地域住民と連携した見守り、住み替え支援、終活支援、成年後見事業などの権利擁護、死去した際に役所の手続きなどを行う死後事務委任契約などの取り組みを行っている。空き家バンクも、こうした支援の一環として位置付けられる。

 

空き家バンクには年間100件ほど「空き家を福祉利用したい」という相談が寄せられる。福岡市社協が持つ市民・ボランティア・福祉事業者などとのネットワークを活かし、空き家オーナーや使い手の希望を基に両者をマッチング。弁護士・税理士・宅地建物取引士・建築士が所属する連絡会の専門的知識で、物件の特性を考慮して最適な活用方法を提案、実現に向けて支援する。現在までに約10件の空き家が福祉目的で活用されているという。

 

 

例として16年には、早良区の紅葉八幡宮に隣接する御堂を障害者向けの生活訓練事業所「利生院」にリニューアル。御堂は元来、地域の集い場など公益的な性質を持つ。それを活かしつつ、障害者が地域の輪の中で、かつ「心穏やか」に自立に向けた訓練が行える場として活用されることとなった。ほか、地域サロンとして活用された例もある。「買い物に行くのが大変」という地域住民のニーズをくみ取り、移動販売の場にもなっている。

 

活用できる状態にない空き家については処分、売却がスムーズに行えるように支援。空き家の発生抑制に貢献している。

 

 

現状は、利用希望件数が物件数を上回る状態。「必要な改修についての費用は使い手側が負担する契約となっている。それでも、家賃が安いこと、先の御堂の例のように環境面を加味して重宝される」(連絡会、中川次郎理事)。

 

空き家問題への取り組みで福岡市社協と連絡会が連携するようになった理由は、それぞれの持つ課題を相互にカバーするため。福岡市社協では空き家及びその予備軍、持ち主に関する情報などを豊富に持つ反面、実際に空き家の活用・処分を執行する部分が難しかった。

 

 

一方、連絡会は執行部分には長けるが持ち主へのアプローチが困難であった。両社の連携で、高齢期の住まいの悩みから、地域での生活、介護・医療の問題、相続、死後の問題まで、トータルでサポート可能になった。

 

「空き家が発生するのは、所有者の『暮らし』の部分に何か問題がある時だと考えている。そうした暮らしの課題を解決できる体制は、空き家問題に取り組む上で必須だ」(福岡市社協、栗田将行事業開発課長)

 

 

福岡市社協では住民向けの終活セミナーも年50件ほど開催。そこで空き家問題に関する啓発も行っている。こうした活動で空き家の発生抑制、早期に流動化させる取り組みを一層推進していく。

 

 

連携のスキーム図(福岡市版社会貢献型空き家バンクWEBサイトより)

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