介護事業所管理者への営業スキル指導/ねこの手 伊藤亜記氏
進捗管理の徹底とタスクの明確化を
営業経験に乏しい管理者などには、丁寧なフォローが必要です。上司が同行し、慣れることでスキルアップを目指しましょう。今号では、管理者などへの営業スキルに関する指導を解説します。
■営業スキル指導
⑴同行する管理者などの選定
同行者を選定する際、注力すべきなのは新人管理者や新規事業がオープンするエリアを管轄する管理職ですが、できるだけエリアマネジャーも同行させてください。また、モチベーションアップや統括エリア全体を盛り上げる意味でも、メールなどで呼びかけ、管理者自ら手をあげさせるのも効果的です。
⑵営業リスト作成を依頼
該当管理者に事前連絡を入れ、同行日の設定と営業先リスト作成の依頼をします。営業先の選定は管理者やセンター長に任せてもかまいませんが、好意にしてくれている事業所より、未開拓や謝罪が必要な事業所を優先に営業先としてあげさせます。特に、クレームなどがあり、行きづらくなっているような事業所には、エリアマネジャーが一緒に謝罪をすることで相手にも誠意を伝えることができます。「行きにくい事業所こそ、上司を使ってかまわない」という姿勢を示してください。
⑶事業所の情報確認
同行者が決まったら、その人が所属している事業所の情報(売上・顧客数の直近2、3ヵ月の推移)を調べておきます。普段、直接話す機会は少なくても、きちんとその施設・事業所を見ているという姿勢を示すとともに、見られているという意識付けを行うためにも有効です。
⑷事業所訪問
現場に訪問後、同行営業の指導のほかに、施設の環境整備にもアンテナを張って、様子を観察し必要があれば、改善に向け、指導を行います。
《チェックポイント例》
・「のぼり」などが汚れたり、切れたりしていないか。また、外から見えやすい位置に設置されているか
・送迎者に傷や汚れはないか。迷惑な場所に駐車されていないか
・施設内は整理整頓・清掃されているか
・スタッフの身だしなみは整っているか など
⑸事前ミーティングの実施
該当施設・事業所を訪問し、事前ミーティングを実施します。営業先リストをもとに、営業先ごとの特徴や、人員構成などの基本情報、エリアの状況などの情報を共有します。また、事業所のアピールポイントも、明確にしておくと、自信を持って営業に臨めます。
⑹営業中
管理者とコミュニケーションをとる中で、管理者が緊張しているようであれば、和ませることも必要です。また、営業には「勢い」も必要ですので、ミーティング中や移動中は厳しく指導することは避けてください。
⑺営業後ミーティング
【営業ToDo台帳】
その日の訪問を振り返りながら、訪問先の情報をまとめます。1件1件を振り返りながら、その事業所に対して今後のアプローチ方法を考えます。結果に結びつけるためには、同行営業実施後の進捗管理を確実に行う必要があります。営業終了時のミーティングでは、「明日から何をすべきか」を明確に【営業ToDo台帳】に明記し、定期的に報告させるなどの進捗管理を徹底してください。
■ヒアリング(情報収集)
⑴管理者の評判をヒアリング
訪問介護などのスポットの依頼が多く、サービスを継続的に利用してもらえない場合、他のサービスに繋ぐ提案ができていなかったり、地域からの評判が良くなかったりする可能性があります。自治体や新規・既存営業先に課題のヒアリングを行ってください。
⑵エリア情報の収集
数多く営業に行っているにもかかわらず、顧客からの依頼が「スポットのみ」「緊急ケースのみ」「他の事業所では受入れ困難なケースのみ」の場合、「営業先の優先順位が的確でない」ことがあります。ケアマネジャーが多くいる事業所でも、顧客の流れ、プランの流れなどエリア内の情報収集を行ってください。
伊藤亜記氏
㈱ねこの手 代表
介護コンサルタント。短大卒業後、出版会社へ入社。祖父母の介護と看取りの経験を機に98年、介護福祉士を取得。以後、老人保健施設で介護職を経験し、ケアハウスで介護相談員兼施設長代行、大手介護関連会社の支店長を経て、「ねこの手」を設立。