「看宗医福」活動推進を 傾聴カフェが多職種連携の場

2023年4月1日

“臨床宗教師”の存在が重要アウェイで活動 布教はせず

介護・医療・福祉職などからなる地域住民のための多職種連携ネットワークの中に、僧侶や牧師といった宗教者が加わる「看宗医福」の活動に関する講演会が、2月6日に京都市で開催された。

 

 

 

震災後9年で累計400回開催

この講演会は、文化時報社(京都市)が発する宗教専門紙「文化時報」の創刊100周年記念イベントの一環として実施されたもの。当日は宮城県栗原市の僧侶金田諦應氏が講師を務めた。

 

元々、地元栗原市で自殺防止のための活動を精力的に行っていた金田氏。「こうした活動は自分1人では限界があり、多職種連携の重要さは実感していました」と語る。

 

 

その後、東日本大震災の被災者の精神的ケアを目的に、僧侶が運営する傾聴移動喫茶「Cafe de Monk」の運営をスタート。新型コロナウイルス感染症で活動が難しくなるまで約9年間、宮城県内45ヵ所で累計約400回開催してきた。「地域全体が『復興、復興』と熱くなり、鼻息が荒くなる中で『ちょっとゆっくりしませんか』と呼び掛けるのが役目でした」と金田氏は語る。

 

やがて、そのコンセプトは全国に広がり、「Cafe de Monk」は様々な運営者により13拠点で実施されるに至った。中には介護事業所や医療機関の中で開かれることもある。昨年4月には、各地の活動内容や活動形態を整理し、ノウハウを共有することを目的に「カフェ・デ・モンクサミット」を開催。現在までに合計6回行われている。

 

 

 

宗教者に備わる「場をほぐす」力

こうした傾聴活動に宗教者が関わるメリットについて、金田氏は「『自分が何とかしてあげよう』など主催者側の熱量が高すぎると逆に相手は逃げてしまう。それに対して宗教者には『暇げなたたずまい』など、場を『ほぐす』力がある」と分析する。

 

 

また「その土地の精神風土を背景にした活動が可能なのが宗教者の強み」と語る。

東日本大震災で大きな被害を受けた三陸地方は「位牌」を非常に大切にする地域で、霞災犠牲者の中には、家に位牌を取りに戻って津波にのまれてしまった人も少なくないという。また、避難先に位牌を持ち出せなかったことについて罪の意識を感じている被災者も少なくない。こうした地域の人たちの信仰・宗教観を熟知した上での関わりが可能なのも宗教者が関わる利点だという。

 

被災地には、カウンセラーや心理学の専門家も訪れたが、中には「半年たっても被災者が心を開いてくれない」というケースもあったという。それに対し宗教者が訪問したら1日で打ち解けてくれたこともあった。

 

 

また、こうした活動に関わる宗教者については、これまでの寺院内・教会内といった自分のホームではなく、地域社会という「アウェイ」で「信者以外も対象に」「布教伝道を目的とせず」「宗派・教団の枠を超えて」「儀礼ではなく、ケアの実践を中心に」活動することが重要であり、こうした「臨床宗教師」が地域に増えていく必要があると訴えた。なお、2016年2月には「一般社団法人日本臨床宗教師会」が発足している。

 

金田氏の地元栗原市では、21年より訪問看護ステーションの連携によりCafe de Monkが月に1回開催されており、現在ではここが医療・介護・福祉関係者の「たまり場」になっている。

 

 

さらには、NPO法人が市から委託されて運営する生活困窮者自立支援事業「ひありんく栗原」や、在宅診療所と協働の形で定期的にCafe de Monkが運営されているという。

 

「悩みごとを発信している人がいれば、みんなで集まって、気負いせず、みんなのできることをやる『さざほざ(※気負わず、身の丈で、という意味の方言)ケア』を実践しています」

 

 

 

金田氏の講演の様子

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