【CHECK マスコミ報道】「100歳以上長生きしたいか?」/浅川澄一氏

2023年5月23日

 

 

 

「8割が思わない」と毎日新聞

 

「人生100年時代」と言われる中、「100歳上生きたくない人が78%も。女性では83.5%にのぼる」という衝撃的なアンケート結果が発表された。日本ホスピス・緩和ケア研究振興財団が実施した1000人のインターネット調査だ。

 

毎日新聞が4月18日に、その前に読売新聞オンラインが報じた。理由を聞くと、「家族や周りの人に迷惑を掛けたくない」と「身体がだんだんつらくなる」を挙げた。財団では「100年時代が本当に幸せなのか疑問に思い出したのでは」とコメント。医療や介護の制度は「長生きは幸せ」を前提としているだけに、その根底が揺らぐ。注目されていい調査だ。

 

 

「訪問介護に外国人材検討」とスクープしたのは10日の読売新聞夕刊。担い手不足対策として、やっと懸案課題が表に。介護保険で先行するドイツでは当たり前、との指摘が欲しい。

 

 

国立社会保障・人口問題研究所から4月26日に将来推計人口が発表された。人口減少のペースが緩むとし、それは50年後に出生数は4割減るが、外国人が毎年16万人も増え、3.4倍増になるからだと翌日各メディアが伝えた。

 

これに対し「外国人増、試算に違和感」との見出しでかみついたのは読売新聞。「賃金が上がらなければ、日本で働く魅力が薄れる」と正しく指摘。加えて、移民政策を正式に認めないままでは、欧米並みの外国人頼みは疑問だろう。

 

 

5月3日の日本経済新聞は、将来推計人口の想定出生率1.36について「中位推計の希望的観測」と批判し、「下位推計の1.13が理に適う」と異論を唱える。人口は年金など社会保障の土台。発表の根拠を問う議論が欲しい。

 

少子化対策が熱を帯びているが、「赤ちゃん連れ 官邸で会議」と写真付きで報じたのは4月28日朝刊の日経新聞。海外では国会でも珍しくない子連れ出勤。日本ではニュースになるところが、男女不平等の実態を表わす。東京新聞は夕刊でカラー写真を載せた。

 

 

「ゴダール監督が選んだ終幕」との見出しが目を引いたのは5月6日の朝日新聞。欧州諸国で安楽死の法制化が着々と進んでいる状況を伝えた。連休中の「暇ネタ」の割に1面を割いて大きく扱った。

 

日本の取組みについては横浜市立大教授が「緩和ケア発達し合法化はデメリット大きい」と否定論を展開。変な論調だ。緩和ケアは日本より欧米の方が普及しているはず。それでも安楽死を求める声が高まっていると強調していながら、日本異質論はおかしい。

 

 

 

 

浅川 澄一 氏
ジャーナリスト 元日本経済新聞編集委員

1971年、慶応義塾大学経済学部卒業後に、日本経済新聞社に入社。流通企業、サービス産業、ファッションビジネスなどを担当。1987年11月に「日経トレンディ」を創刊、初代編集長。1998年から編集委員。主な著書に「あなたが始めるケア付き住宅―新制度を活用したニュー介護ビジネス」(雲母書房)、「これこそ欲しい介護サービス」(日本経済新聞社)などがある。

 

 

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