【職員確保へのイシュー➂】「依存」から脱却に向け慎重な採用活動を

2023年8月25日

ハローワーク機能強化 福祉人材センターも

 

民間の紹介事業者の課題が指摘されるとともに、機能強化を期待されているのがハローワークだ。「人材確保対策コーナー」の拡充や各ハローワークの職種別就職実績を毎年度公表するなど、人材マッチングを進める取り組みを行っていく。また、厚労省は各地域の「福祉人材センター」の活用も勧めている(【職員確保へのイシュー①】厚労省記事参照)。

 

 

 

パートナーとして最大限の活用を

 

介護事業者は有料職業紹介のほか、こうした公的機関の活用やリファラル採用、自社HPやSNSからの採用など、あらゆるルートで人材確保が必要なのは言うまでもない。
 

そして紹介事業者経由で採用した職員の早期離職を問題視する意見もある一方、退職の大きな理由は人間関係や労働環境。その改善も避けては通れない。とはいえ、紹介事業者に頼らざるを得ない介護事業者が多いのも事実。どのように上手く付き合っていけばいいのだろうか。
 

まず、最終的には民間同士の契約であるという前提を念頭に置く必要がある。例えば、3ヵ月以内に離職した場合に返戻金が発生する契約だった場合、4ヵ月目以降に離職しても返戻金はない。そこの認識に差が生じると、トラブルが起こるケースもある。
 

そこで介護事業者には、優良な紹介事業者を選定した上で契約書を隈なく確認する、擦り合わせをきちんと行う――といった慎重な対応が求められる。しかし慢性的に人材不足であるがゆえにそれらに時間を割けない、明日にでもすぐ人が来てほしい――という現場も多いだろう。

 

 

 

人員配置基準の配慮必要
 

7月10日の介護保険部会で佐藤主光委員(一橋大学教授)は「人員配置を満たすために急いで人をかき集める状況だと、つけ込まれる余地が出る。介護報酬制度でも、人員配置基準への柔軟な配慮が必要」と構造的課題に触れている。この点も踏まえ、「紹介事業者の適正化・集中的指導監督」のみならず「介護事業者が上手に付き合っていくだけの余裕を生む」ための人員配置基準への配慮や生産性向上、さらなる処遇改善など国の施策も求められる。
 

厚労省は「これまで指導した会社は指導に応じている」と言及しており、「お祝い金」の事例も少なくなってきていることから、今回の3分野に関わる紹介事業者の集中的指導監督も一定の効果が期待できるものと思われる。適正化が図られ、優良な紹介事業者が生き残るとともに、介護事業者・紹介事業者双方が人材不足の局面をともに乗り越える良きパートナーとなっていくことが望まれる。

 

 

 

◆◇◆

 

(一社) 日本人材紹介事業協会に聞く

 

求職者の自由尊重 採用面接も工夫を

 

日暮拓人事務局長

当協会は、主にホワイトカラーにおける有料職業紹介事業者の業界団体。厚労省より「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」の事業を受託し、運営している。
 

紹介事業の適正化に向けた取り組みに異存はない。紹介事業者は雇用情勢の全体を俯瞰しつつも、求人者の要請には可能な限り応えていく必要があるものと考える。一方で、求職者には職業選択の自由があることを忘れてはならない。求人者側には、魅力ある職場環境や処遇改善、労務管理、人材育成などが求められる。
 

法律にも定められているように、紹介事業者ができることは「あっせん」という行為。最終的に採用を決めるのは求人者であり、入職を決めるのは求職者。適格紹介の実現のためには、
▽採用段階から会社の良い面も悪い面も開示し、入社後のギャップを少なくする
▽人間関係が密となる直属の上司とも面接の機会を設ける
――など、採用の工夫を行い、入職前の職場理解を高める努力は求人者にも必要である。
 

また、紹介事業者を最大限に利用してもらいたい( 下表参照)。紹介事業者から得た情報をもとに、どのように採用活動の打ち出し方を変えるか、労働環境を改善するかなどについて、PDCAサイクルを回すことが結果的には採用と定着につながる。そうして介護事業者の人事力が高まっていくことが一番望ましいことだ。
 

加えて、「医療・介護・保育分野における適正な有料職業紹介事業者の認定制度」は認定社数増、認知度向上に向けてリーフレットやサイトでの周知活動に力を入れる。ぜひ認定事業者を活用してもらいたい。

 

 

 

 

 

 

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