“終身建物賃貸借”活用課題 住宅セーフティネット制度見直しへ

2023年9月11日

3回目の住宅確保要配慮者に対する居住支援機能等のあり方に関する検討会が8月28日に実施された。今回は前回同様委員からの取り組み状況の報告に加えて、座長より住宅セーフティネット制度見直しに向けたこれまでの議論のまとめが提示された。

 

 

公益社団法人全国宅地建物取引業協会連合会(東京都千代田区)の岡田日出則委員は、高齢者への住宅斡旋について管理会社を対象に行ったアンケート結果を提示した。
 

終身建物賃貸借契約(賃借人が死亡すると賃貸借契約が終了し、賃借権が相続されない契約。契約終了に関わる各種手続きが円滑に進められるメリットがある)について約85%が「知らなかった」と回答。「仮に知事の認可や建物の改修要件がなければ利用したいか」という設問には、約64%が「利用する」という意向を示した。
 

アンケートの結果を踏まえて岡田委員は、普通賃貸借・定期建物賃貸借と同様、一般的な賃貸借の類型として位置づけるなどの「思い切った見直し」が必要と述べた。

 

 

出所:岡田委員提出資料より

 

 

退去時まで伴走 包括的支援検討

 

委員からの報告の後、大月敏雄座長(東京大学大学院工学系研究科教授)が、今回までに行われた議論を整理したメモを提示した。取り組むべき課題については次の点が挙げられた。

 

■居住支援の充実
・ソフト・ハードの両面からの総合的で地域密着型の情報提供・相談体制の構築・入居から退去まで切れ目のない支援を提供する伴走型の支援体制の構築と、居住支援法人が緩やかな見守りをおこなう支援付住宅制度の創設と普及のための支援
・居住支援法人への経済的支援充実や事業継続モデルの構築

 

■賃貸人が住宅を供給しやすい市場環境の整理
・家賃債務保証制度の充実と生活保護の代理納付の原則化と、緊急連絡先を確保できない要配慮者が使いやすい家賃債務保証制度の整備。居住中の見守りなどのサービス充実
・残置物処分や特殊清掃費用の賃貸人の負担軽減と費用逓減対策・終身建物賃貸借の対象の拡大など使いやすい制度への見直し

 

■住宅確保要配慮者のニーズに対応した住宅等の確保
・住宅確保要配慮者が負担しやすい住宅の確保のため、安心安全に配慮した居住水準の見直し、家賃の低廉化
・公営住宅との役割分担と公共住宅ストックの活用
・住宅だけでないサードプレイスづくりへの支援の検討
 

 

委員からは特に終身建物賃貸借の対象の拡大について、「身体機能が衰えても最期まで暮らせることを目的とした制度であり、バリアフリーなどの条件を緩和すればそうしたリスクを見据えて借りるということができなくなる」「制度自体のあり方について再検討も必要」など多くの意見が挙がった。
 

次回の会合は9月21日を予定。中間とりまとめの素案が出される予定だ。

 

 

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