老人ホーム入居紹介料問題を考える① 届出制度、健全化の柱へ【高齢者住まい事業者団体連合会×紹介会社 座談会】
高齢者の住まい選びにおいて、民間の老人ホーム紹介会社が果たす役割は年々大きくなっている。一方で、業界内のルール整備は未成熟であり、紹介手数料をめぐるトラブルや透明性の確保など、多くの課題も抱えている。国の検討会での議論にも発展している現状について、どう捉えているのか。高齢者住まい事業者団体連合会(以下・高住連)と紹介事業者を迎え座談会を行った。(聞き手:高齢者住宅新聞社社長 網谷敏数)
業法なき業界 求められるモラル
――高住連の「高齢者向け住まい紹介事業者届出公表制度」(以下・届出制度)の現状は
光元 今年7月時点で722社が届出制度に加盟しています。相談員は3000人超、法人規模では小規模な事業者が多いと感じています。相談員向け基礎講座の受講者は今年4月1日時点で延べ1000人超。約2時間のeラーニングを受講後、確認テストを行うものです。この業界は業法がありませんが、守るべきルールがないということではありません。業務に関連する法令などを軸に、倫理面も踏まえてまとめたコンプライアンスマニュアルを、届出を行った紹介会社にお送りしています。
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高齢者住まい事業者団体連合会 光元兼二事務局長
――業界団体が後ろ盾となり制度を作ったことで大きく変わった印象です
田中 私はこの業界に入って20年ほどですが、「やっとここまで来たか」という感覚です。同業他社からは、資格制にしていくべきではという声もあります。しかしそこは慎重に段階を踏んでいかなければならず、まだまだ長い道のりでしょう。そんな中、昨年9月からの新聞報道に端を発し、紹介会社の手数料などが問題視されているという現状だと思います
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ソナエル 田中宏信取締役
市原 ホーム運営事業者は、紹介会社と共存共栄の関係を作っていかなければならない。必要に応じて届出制度の見直しを行ったり、好事例を基にした紹介会社向けセミナーを開催したりしています。高住連の事業は、関連事業者の方々の意見や意向、希望を踏まえつつ展開したいと思っています。
今後ますます高齢者が増え、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅が約2万5000棟もある中では、自分で住まいを探そうにも難しくなってくる。一方で紹介事業においても、届出制度を資格制度や認可制度にしていくには非常にハードルが高く、法整備も必要です。国や行政の議論の行方を注視しつつ、ミーティングなどを通して意見交換をしたうえで、必要なことについてしっかりと協議していくべきだと考えます。
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高齢者住まい事業者団体連合会 市原俊男代表幹事
――一連の報道で問題視された紹介料について、20万~30万円ほどの相場に対して一部で100万~150万円に上るケースもあると。契約事項や契約書も決まったものがない状況です
光元 かつては、紹介会社が少ない時代に運用されていた契約書がコピーされ流通していたような実態でした。実質的に運営をしていく中で、決めておかなければならないことも出てきました。例えば、紹介料を受け取る権利の期間やタイミングの設定。ほかに、短期で退去された際の紹介手数料返戻ルールもあります。これらを踏まえ大手社らが先行して作ってきた契約書を活用しながら、高住連としても雛形を作ってきました。
しかし、何百社、何千社と契約を取り交わしている状況下で一斉に契約書を変えてもらうことは難しく、まずは「本来あるべき決め事」について、項目設定と考え方を知ってもらうところから始めているところです。
嘉門 紹介会社独自の契約書を使っているところが多いですが、徐々に運営事業者が自社でリーガルチェックを受けて作成した契約書に切り替わるケースも増えています。紙の契約書から電子契約に移る動きもあり、事業者によって使う電子契約の会社が異なるなどの事情もあって、足並みを揃えるのが逆に難しくなっています。
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東京ロイヤル 高齢者事業部 嘉門桂介執行役員
田中 老人ホーム紹介事業の黎明期における紹介手数料は、入居一時金が1000万円以上の場合3%、1000万円未満の場合は一律30万円といった契約内容が主。3ヵ月以内の退去については、入居一時金を全額返金する短期解約特例に倣い、紹介手数料も全額返金する、という慣例でした。私の記憶では2005年頃からこれを月割りや日割りにしてもらえないかと運営事業者と協議を行い、理解していただけるようになった経緯もあります。30万円の紹介料をいただいたとして、例えば90日の3分の1、30日で退去された場合、20万円を返戻するといった契約であるところが多いです。
<②に続く>