2026年3月11日号  5面 掲載

特別養護老人ホームの経営実態と生き残り策/スターコンサルティンググループ 糠谷和弘氏

2026年3月12日

 

稼働率向上だけでは収支改善せず

 

特養の経営状況(全国約1000事業者対象)を調査する事業に参画しています。詳細はデータ公表前ですので控えますが、2024年度数値で見ると「小規模特養(30)」、「地域密着型特養」、「広域型特養(31床以上)」のいずれの類型でも、半数近く「サービス活動増減差額(いわゆる営業利益)」で“赤字であるというとてもシビアな実態です。

 

では「利用率(定員稼働率)」が低いかというと、いずれの分類でも中央値で95%以上となっており、むしろ高い水準を維持しています。実際、昨年5月に公表された「経営概況調査」でも、特養の税引前収支差率は14%と低水準でした。つまり特養は、たとえ高稼働率であったとしても黒字化が極めて難しい事業であると言えます。

 

こうなると制度における基本報酬のアップや、施設が立地する自治体による支援を期待したいところですし、業界全体として強く求めることは言うまでもありませんが、報酬改定まではまだ1年あります。加えて、プラス改定を約束されているわけではありませんから、1年なんとか乗り切ったとしても、その後はより厳しく悲観的な未来も予測されるのです。

 

 

【特養生き残りのポイント】

 

待機者を増やすために日頃から空き情報を地域の居宅介護支援事業所、病院の地域連携室と共有するだけでなく、利用を検討するご本人、ご家族に「ここを利用したい」という印象を持ち、利用申し込みをしていただけるように、日頃からサービス品質の向上に努めましょう。

しかし前述のように、それだけでは十分とは言えません。2026年度に着手してほしいことは5つあります。

 

1)併設サービス強化

稼働率を上げて収入を上げても黒字化が見込めないのであれば、ショートステイ、デイなどの併設サービスの稼働率を徹底的に上げて利益を確保するしかありません。併設サービスで以下に述べる“未来投資の原資を稼ぎ出しましょう。

 

2)人員効率の向上

収入を上げても、利益が残らないのは、物価高に単価が追いついていないことが最大の理由ではありますが、人件費の点で高コスト体質になっていることも否めません。これまでの人員配置(シフト)を分析して、時間帯ごとの人員数(特に入浴、食事介助)を把握しましょう。その上で、サービス動線の見直し、ICT化やピークタイムの業務を、アイドルタイムに移すなどの工夫で、人数を減らすことができないかを検討しましょう。

 

3)処遇改善加算UPをきっかけとした人事制度見直しと採用強化

施設によっては、職員が不足していて、受け入れが思うようにいかないとか、併設ショートステイの稼働を向上できないなどの悩みを持つところもあるでしょう。そこで「介護分野の職員の賃上げ・職場環境改善支援事業費補助金」および6月から拡充される処遇改善加算の受給をきっかけに給与制度、勤務条件・待遇、キャリアパス制度を見直して、採用を強化しましょう。ある施設では、職員が不足する夜勤、早番、遅番や、祝日出勤の手当を大幅に増額しました。このように、自施設の課題に合わせた見直しが効果的です。

 

4)スキマバイトの活用スキマバイトは、欠員時に依頼している事業者が多いと思いますが、それだけでなく人員効率を上げる手段として、ピークタイムにピンポイントで短時間パートやスキマバイトによって補充し、全体として人件費が過大にならないように調整している施設もあります。

他にも、職員の産休・育休や介護休業があった際新規で人員を採用すると、その職員が戻った際には職員数が過剰になります。その期間のみ(期間限定で)活用して、全体として人件費を抑制するのも一つの手段です。

 

5)外国人介護士の活用

調査によれば、外国人への「教育費」「渡航費」や「監理団体・登録支援機関の費用」などのコスト、さらには日本語・日本文化の指導にかかる時間的負担を理由に、外国人採用に二の足を踏んでいる実態がうかがえました。しかし、全体の約78割が新卒採用はゼロであり、職員の高齢化も同時に進んでいます。外国人介護士なくしては、運営が継続できない可能性もあります。複数の監理団体等にアクセスして情報を収集するなど、1日も早く着手しましょう。

 

 

 

糠谷和弘氏 代表コンサルタント ㈱スターコンサルティンググループ
介護事業経営専門のコンサルティング会社を立ち上げ、「地域一番」の介護事業者を創り上げることを目指した活動に注力。20年間で450法人以上の介護事業者へのサポート実績を持つ。書籍に「介護施設帳&リーダーの教科書(PHP)」などがある。

 

 

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