2026年7月1日号 16面 掲載
精神科と内科を融合、全人的な医療へ 梅本ホームクリニック
医療法人社団梅本会 梅本ホームクリニック(東京都中央区)は2021年に開設された在宅診療専門のクリニック。統括理事長の梅本一紀氏は、精神科と内科を融合させた在宅診療を実践している。その診療方針と今後の展望について話を聞いた。

医療法人社団 梅本会 梅本ホームクリニック
梅本一紀 統括理事長
法人概要
所在地▶東京都中央区
患者数▶約800名
スタッフ▶約70名
ドクター▶約35名(うち、精神科医5名)
診療科▶総合診療科、循環器内科、心臓血管外科、神経内科、消化器内科、泌尿器科、リウマチ科、皮膚科、耳鼻科、眼科、整形外科、リハビリ科、精神科、麻酔科、救急科
――開業に至った背景を教えてください
梅本 原点は自身の家族にあります。大学3年生の時に母親が若年性認知症を発症し、官僚だった父は介護のため離職しました。その姿を見て、強い問題意識を感じると同時に、母親の認知症を治したいという思いから、精神科を志しました。
――クリニックの理念はそこから生まれたのでしょうか
梅本 当院の理念は「患者様を最愛の人のように大切にする」「患者様を孤独から救う」の2つです。
医療行為だけでなく、患者との関係構築も重視しています。その一環として、音楽療法の考え方も採り入れており、私は患者宅でグロッケンという鍵盤打楽器を演奏することがあります。例えば、富士山が好きな患者に「ふじの山」を演奏したこともあります。楽器は毎朝練習して習得しました。訪問前にリハーサルも行っています。
――「精神内科」というコンセプトを掲げています
梅本 精神科医は内科を、内科医は精神科の診療を避ける傾向があり、都内には両方を診療できるクリニックは多くありません。
当院では現在、精神科の上級医5 名が在籍。精神科医が主治医となり、内科医がサポートする体制をとっています。精神科医は100本以上の動画で内科研修を受けており、プライマリーケアや膝関節注射などにも対応可能です。

患者との関係構築も重視する
――精神科と内科が連携することの意義は
梅本 統合失調症で精神的に不安定な患者の場合、まず精神科医が介入して症状を安定させる一方で、せん妄の背景には心疾患や脱水などの内科的疾患が隠れていることが多いため、内科医がその要因を診断・治療します。
精神薬の副作用が起きた場合も、内科医が対応できます。統合失調症の患者は糖尿病や心疾患を併発するケースも多いです。各専門性を発揮できる体制が医療の質を向上させます。
在宅訪問時、外来で処方された薬が服用されていないケースも散見されます。精神科医が介入し、多剤処方を整理することも重要な役割です。
――診療報酬改定により、夜間・休日の往診対応に変化はありましたか
梅本 今回の改定は、在宅医療機関に対し「重症患者を支えられるか」という問いを投げかけるものです。
当院は従来、夜間・休日の往診対応を外注していましたが、改定を機に内製化しました。コスト面の利点に加え、日中の担当医が夜間も診る体制が患者にとって有益だと判断したためです。夜間は医師とメディカルクルーの2名体制で対応しています。精神科の患者は夜間の電話が多い傾向にありますが、往診は1日1件程度です。日中の状態管理と看護師によるオンライン診療の活用で、不要な往診を最小限にしています。
業務AI独自開発医師研修にも注力
――AIの活用にも取り組んでいます
梅本 「自ら変わり医療を変える」というステートメントを掲げ、エンジニアを直接雇用して独自のAI開発を進めてきました。すでに、診察内容からToDoを自動生成し、担当者割り当てやリマインドを行う仕組みを運用中です。また、紹介状などの書類から情報を抽出し、初診準備カルテを自動生成するAIも稼働しており、電子カルテとAPI連携しています。
――今後の展望は
梅本 現在の患者数は約830人です。30年までに患者数1万人を目標として定めました。
現在、江東区と新宿区にサテライト拠点を設置していますが、江戸川区で閉院するクリニックの患者を引き継ぎ、エリアを拡大します。銀座で構築したモデルを、江戸川区や千葉県に展開していく計画です。
独自の取り組みや患者とのエピソードを書籍にして出版することも計画しています。在宅で生活を続けるという選択肢と、関連する社会課題を広く伝えることが目的です。認知度の向上は、信頼の獲得、地域連携の強化、採用、現場改善の好循環につながると考えています。













