介護旅行年間400件 要介護者の外出を支援

2014年7月10日

JTB・三越と提携

 

エス・ピー・アイ(東京都渋谷区)は、「あ・える倶楽部」のブランドで20年ほど前から介護旅行、トラベルヘルパーの養成に取り組む。現在年間400件、1000人ほどの外出を支援している。昨年からはトラベルヘルパーセンターを首都圏中心に展開。さらに密度の濃いサービスを手掛けている。同社の取り組みを紹介する。

 

介護保険費の増大でインフォーマルな外出支援・移動支援に関心が集まっている。1991年に起業し、95年からトラベルヘルパー(外出支援専門員)の育成を開始したSPIの篠塚恭一社長は語る。

 

 

SPIあ・える倶楽部
篠塚恭一社長

 

 

「市町村が地域の総合事業としてインフォーマルサービスを手掛ける必要性がますます高まっていくが、それを総合的にサポートする人材や経験がないのが現状」

 

同社は98年から「あ・える倶楽部」のブランドで介護旅行をスタート。現在年間400件、人数にして1000人ほどの外出をトラベルヘルパーが支援している。

 

同社ではトラベルヘルパーを養成するNPO法人日本トラベルヘルパー協会を設立。3級、準2(講座時間65時間)2(120時間)の階級で養成講座を設けている。準2級は日帰り旅行などが対象、2級は長期の海外旅行や入浴技術などを学ぶ。養成講座は東京、大阪をはじめ地方都市で開催している。

 

 

現在約600人が受講。そのうち認定トラベルヘルパーとして400人ほどが全国で活動している。SPI(あ・える倶楽部)に所属するトラベルヘルパーは養成講座受講者の半分ほどを占める。

提携旅館は全国で100ヵ所ほど。外出支援・介護旅行の半数は要介護者一人にトラベルヘルパー一人が付き添う形態。要介護者の体格に合わせ二人体制でサポートすることも可能。出発地は首都圏からも地方都市からも依頼できる。

 

旅行の目的は家族の親孝行、身内の結婚式・葬式など様々。日帰りか一泊の要望が多くを占める。近年は期間が長期化。昨年まで約14日だった旅行期間が今年は約23日まで伸びている。

 

「これまでNPOが制度にはまらないサービスを自発的に手掛けてきたが、最近は担い手の高齢化で少し息切れしているような現状もある。彼らをサポートすることも必要だ」(篠塚社長)

地域に密着した介護旅行の提案・サポートを行っていくため開設したのが、トラベルヘルパーセンター。これまで介護旅行を手掛けてきた介護事業者や医療機関、介護タクシーなどと組み、昨年から千葉や神奈川、東京などの首都圏を中心に11ヵ所設けた。

 

「首都圏と言っても、都心から離れた千葉の南部、神奈川の西部、埼玉の北部などは旅行のサポートが大変。地域に拠点を設けることで、きめ細かな要望に応えていきたい」(篠塚社長)

トラベルヘルパーの利用基本料金は1時間、半日、1日で設定。自立から要支援程度の利用者で1時間3375円、121600円、重度者で1時間4220円、127000(いずれも税込)

 

新たな取り組みにも積極的で、JTBとは介護旅行のパッケージプランで提携。“ヘルスツーリズム”と銘打ち、食事、入浴、宿泊先に配慮した企画を商品化した。三越との連携による買い物支援や世界一周旅行企画などにも参画。今年からは介護旅行をトータルに補償する賠償責任保険の商品化にも関わった。

 

今後は高齢者施設の介護旅行の要望に応えるため、外出支援のコーディネート講座を始める予定。外出や旅行のプランニングができる人材を養成することで、他施設との差別化を果たしてもらう。

 

「介護旅行と一口にいっても、関わる方は本人・家族、介護事業者、旅館、交通機関、観光協会など多種多様。それらをまとめていくのが当社の役目。今後も高齢者の希望を叶える旅行を実現していきたい」(篠塚社長)

 

この記事はいかがでしたか?
  • 大変参考になった
  • 参考になった
  • 普通
全ての記事が読める有料会員申込はこちら1ヵ月につき5件まで閲覧可能な無料会員申込はこちら

関連記事



<スポンサー広告>