中高年が子供時代に親しんだもののリバイバルを考える/村田裕之氏【連載第24回】

2019年6月5日

—村田裕之のシニアビジネス相談室—

 

「キン肉マン『超人』」という図鑑が売れています。出版社は学研プラス。

 

「図鑑の学研」と少年漫画の金字塔「キン肉マン」が夢の友情タッグで実現、というのが売りです。出版社のコピーは次の通り。

 

「子どもの頃の自分にプレゼントしたい。あふれる知性と熱い友情に満ちた究極図鑑をご堪能あれ!『世界を知ること』の面白さを、図鑑で学んだ。『友情』『努力』の尊さを、キン肉マンが教えてくれた…。そんな少年・少女時代を過ごした全ての人に贈る懐かしさ全開の胸アツ図鑑が、この『学研の図鑑 キン肉マン 超人』である。本書を開くその間は、ただ夢中だった『あの日』にもどれることを、読者諸兄にお約束する」

 

ノスタルジー消費は本格派で

 

実はこれは以前取り上げた「ノスタルジー消費」を狙ったものです。かつて学研は、大人向けの雑誌「大人の科学」というのを出しています。これは現在40~60歳代の人が子供の頃に親しんだ「学研の科学」の大人向けリバイバルで、その年齢層に売れました。

 

「ピンホール式プラネタリウム」「電子ブロック」「簡易ソーラー発電」「紙フィルム式映写機」「USB特撮カメラ」などが付録になっています。「簡易ソーラー発電」などは「学研の科学」の時代にはなかった現代風の付録になっていますが、ちょっと豪華な付録つきの科学雑誌というコンセプトはそのままでした。

 

このように、子供の頃の商品を単純にそのまま再現するのではなく、現代風のアレンジを施したうえで、楽しかった頃のコンセプトをリアルに再現するのが「ノスタルジー消費」を促すポイントです。

 

一方、「大人の科学」は第1弾は大ヒットしたものの、第2弾、第3弾になるにつれ、販売に苦戦しました。これは、単に昔ヒットしたものをリバイバル商品にしたら売れるわけではないことを示唆しています。

 

映画「ボヘミアン・ラプソディ」も、単なるクイーンのリバイバル映画であったなら、あれほどの大ヒットにはならなかったでしょう。目の肥えた中高年がリアリティを感じるキメの細かさ、よく練られた物語性など、手抜きのない本格派であることが重要なのです。

 

村田アソシエイツ代表 東北大学特任教授 村田裕之氏

87年東北大学大学院工学研究科修了。日本総合研究所等を経て02年3月村田アソシエイツ代表。06年2月より東北大学特任教授。わが国シニアビジネス分野のパイオニアで多くの民間企業の新事業開発に参画。高齢社会研究の第一人者として講演、新聞・雑誌への執筆も多数。著書に「成功するシニアビジネスの教科書」(日本経済新聞出版社)など多数。

 

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