財務省から11の提言、次期介護報酬改定の行方に影響/斉藤正行氏
4月13日に『財政制度等審議会財政制度分科会』が開催され、社会保障に対して財務省より資料が提出されました。毎年、4月に提出される本資料の一部が参考となって政府による「骨太方針」への記述へと繋がる大変重要な内容であります。
今回も介護に関して、財政再建の観点から多くの厳しい提案が盛り込まれています。介護現場に影響の大きい11の意見提言が示され、その多くは数年前から問題提起されていた内容であります。
①ICTの推進による人員基準要件の緩和と文書量削減などの業務効率化の推進について
②経営主体の大規模化・協動化の推進について
③介護事業者の財務状況の公表化について
④利用者負担の原則2割負担の導入について
⑤ケアプランの利用者負担の導入について
⑥区分支給限度額の対象外となっている加算の特例措置の見直しについて
⑦老健等における多床室の室料負担の見直しについて
⑧総合事業における事業費の上限設定に対する特例措置の見直しについて
⑨訪問介護の生活援助及びデイサービスの要介護1・2の総合事業への移管について
⑩居宅療養管理指導の軽度者への給付の適正化について
⑪居宅サービスの自治体による指定拒否権限の付与について
この財務省による提案が全て実現することはありませんが、今後の制度改革において一定の影響力があることは間違いありません。
とりわけ、従前より私が警笛を鳴らしている通り、次期報酬改定は同時改定であり、コロナ禍の一定の収束を迎えた後となる可能性も高く、社会保障費の適正化、報酬削減の声が高まることは間違いなく、その意味でも今回の財務省による提案を注視し、介護現場として報酬の適正化に協力できることは協力するとともに、現場に大きな問題が生じることは、しっかりと反証していかなければなりません。
上記の提案の中でも特に、⑤のケアプランの利用者負担の導入は、前回報酬改定においても活発に議論されたテーマであり、福祉用具貸与の軽度者改革とともに、次期報酬改定における大きな論点の1つとなることから、一層の注目が必要であります。
更には、⑨訪問介護の生活援助及びデイサービスの要介護1・2の総合事業への移管も、数年前より財務省は提案を繰り返している項目ですが、現場への影響が大き過ぎることから具体的な見直しに向けた議論は進んでおりません。
それでも、形を変えながら着実に軽度者改革が推進されていく可能性は高いことから、介護現場としては動向に常に着目するとともに、現場視点に基づく意見提言を行っていく必要があります。
斉藤 正行 氏 プロフィール
2000年3月、立命館大学卒業後、株式会社ベンチャーリンク入社。メディカル・ケア・サービス㈱の全国展開開始とあわせて2003年5月に同社入社。現在の運営管理体制、営業スキームを構築し、ビジネスモデルを確立。2005年8月、取締役運営事業本部長に就任。2010年7月㈱日本介護福祉グループ副社長に就任。2018年4月㈱ピースフリーケアグループ代表に就任。2018年6月、介護業界における横断的・全国的組織となる一般社団法人全国介護事業者連盟を結成。㈱日本介護ベンチャーコンサルティンググループの代表を務めている。