【韓国シニアビジネス最前線】デジタル基盤、ケア提供の要に 認知症支援から介護予防まで
日本の介護保険を参考に形づくられた韓国の長期療養保険。デジタル技術を介護予防や認知症支援に最大限活用し、市民にサービスを提供している。大型CCRCのような施設もあれば住民参加のコミュニティケアもあり、その人の個別性に合わせた支援が用意されている。視察最終日、元衆議院議員の山崎摩耶氏、高齢者住宅新聞社社長の網谷敏数は韓国メディアの企画で、韓国シニアライフ協会高鐘寬会長と対談。今回のツアーで見えた韓国と日本におけるシルバービジネスの共通点・相違点、今後の発展に向けて必要な視点などについて語った。
介護保険被保険者20歳から 日本に学び、韓国流に改良
高 今回の視察ツアーでは韓国の療養施設やCCRCをご覧になりました。総括してどのような感想を持たれましたか。
網谷 この4日間の間に色々と見させていただきました。まず長期療養保険について、日本の介護保険の施行が2000年、韓国の長期療養保険の施行が08年。日本に倣いつつ韓国流にブラッシュアップした形で保険制度をうまく運用しているという印象を持ちました。
今回は予防・リハビリテーションについての話を聞く機会が多かったのですが、非常にレベルが高い。認知症ケアに関しても同様です。
山崎 日本は40歳から介護保険の被保険者ですが韓国は20歳から。そして国民健康保険の公団が保険者、日本では市町村が保険者です。財源の持続性の部分で優位であると感じました。日本の介護保険でできなかったことを韓国は制度開始当初から実施しています。
高 韓国と日本を比較して、どういった部分に違いがありますか。
網谷 デジタル情報が基盤となって介護予防や認知症ケアを実践していることが分かりました。日本もデータベースの活用が重要視されていますが、なかなか進んでいません。韓国ではデジタルを活用し、アクティブな高齢者から要介護の高齢者までくまなくサービスが行き届いています。
山崎 認知症安心センターではコロナ禍で一時利用者が通えなくなった。そこでZoomを使用して在宅の人々に個別にケアを提供しました。日本では考えられません。
高 韓国の制度に関してはどのような見解を持っていますか。
網谷 山崎さんが言ったように、日本の保険者は市町村で韓国の場合は公団です。これについては一長一短でありどちらが優れているとは一概には言えません。少なくとも公団では日本の長所・短所を学び、良い部分を取り入れて実践しています。
山崎 韓国では地域住民を参加させながらさまざまなサービスが動いています。日本も住民参画が大きなテーマとなっていますが、進んでいるとは言い難い状況です。
網谷 日本では科学的介護や介護DXといったことが進められており、最近はさらにICT化の推進とともにアウトカムが重要視されています。韓国でもアウトカムが求められてくるのではないでしょうか。
両国制度の維持・発展に向け リアルタイムで情報共有を
高 韓国では今回視察された「マリステラ」のような大型施設が増加しています。
網谷 日本では大型・高級施設もあれば、地域に根付いたコンパクトな施設も多い。どちらが優れているという話ではなく、韓国でもマリステラのような施設もあれば地域に根付いた小規模な施設もあるといったように両面が必要だと思われます。
高 今後超高齢化社会を迎えるにあたって、どのように韓国と日本が協力できるでしょうか。
網谷 世界的に見ても介護保険制度を運営している国は少ない。その中でどういう制度でサービスが提供できているのか、どういう需要があるのか、お互いがリアルタイムで情報共有しながら制度を発展させていく必要があるでしょう。
今回の視察ツアーで得た知見を日本に持ち帰り、セミナーなどで活かしていきます。1回限りでなく継続的な関係を構築したいと思います。
山崎 お互いのノウハウを共有しながらサービスを高め、特に人材確保の面でさらに協力が進むことを期待します。

韓国視察最終日に実施された対談。両国の介護保険制度発展に向け、今後も情報共有をしていくことが重要と網谷は話した