『通所+訪問』に賛否 「人材不足の根本的対策ではない」 介護給付費分科会
厚生労働省は8月30日、第222回社会保障審議会介護給付費分科会を開催した。認知症への対応力強化や医療・介護連携、地域の特性に応じたサービスの確保、LIFEなどについて議論(下まとめ)。「通所+訪問」の新複合型サービスについては委員の中で意見が分れた。

厚生労働省の資料をもとに編集部で作成
訪問等のLIFE反対の声
新たな複合型サービスは昨年の介護保険部会で厚労省が提案し、来春からの実現を目指して検討が進められている。
今回の分科会で厚労省は改めて創設の背景やヒアリング調査による複合のメリットを提示。利用者と接する時間が長い通所介護で利用者の性格やニーズを把握し、訪問介護側にフィードバックできるなどの利点が挙げられた一方、複数の委員からは反対の声があった(下表)。厚労省はこれらの意見も踏まえて今後も検討を重ねていく構え。
LIFEの議論においては、科学的介護の取り組みを普及させるため、厚労省が利活用の手引きや動画マニュアルの作成、介護事業所・自治体職員向けの研修を実施してきた。LIFE関連加算を算定している事業所の割合は2023年4月時点で介護老人保健施設が約80%と高い一方、通所介護や小規模多機能型居宅介護、看護小規模多機能型居宅介護などは50%以下と低い。
公益社団法人全国老人保健施設協会の東憲太郎会長は「2年半で蓄積した貴重なデータをスクリーニングして分析し、現場の負担となる項目や自立支援に資する項目は何か、丁寧な検証が必要」と指摘。訪問や居宅介護支援事業所などへの拡大については「入力の負担が大きく、項目内容の精査やフィードバックも不十分であるため、現時点でほかのサービス種別へ広げることには反対」と主張した。
産業医科大学の松田晋哉教授は「まずは評価項目の統一をすべき。表記や項目が異なることで電子カルテの統一が失敗したように情報の統合や連携をする際に全体的コストがかかる。ADLなどの項目を認定調査票の基準に合わせて整理していくのが1つの方向性だろう」と提言した。