2026年6月10日号 12面 掲載
電動カートが介護予防に 千葉大学らの研究グループが発表
高齢者599名対象に調査
千葉大学予防医学センター(以下:千葉大学)と、日本福祉大学の研究員による共同研究グループは6月4日、「公共交通機関として電動カートを活用することが高齢者の要介護リスクを軽減させる可能性がある」という検証結果を発表した。
電動カート利用群と未利用群における2年後のリスク点数の差

2年にわたり検証を続ける
この研究は千葉大学の近藤克則特任教授、日本福祉大学の斉藤雅茂教授ら6名が、奈良県王子町及び大阪府河内長野市在住の要介護認定を受けていない高齢者599人を対象に実施した。なお、研究は千葉大学とヤマハ発動機の共同研究契約に基づき、ヤマハ発動機及び国立研究開発法人科学技術振興機構の研究助成を受けて実施した。

検証で使用した電動カート
時速20キロメートル未満で公道の走行が可能な7人乗り(運転手1人含む)の電動カートを2年間にわたって公共交通機関として運行。なお、王子町では2年間継続的に運行する一方、河内長野市では運行を一時停止し、なおかつ再開後は減便するという形で、高齢者の利用しやすさに差を持たせた。そして、両地域の被験者を「カートを利用する群」と「カートを利用しない群」に分け、実験終了時の「要支援・要介護リスク評価尺度」( ※ 詳細は本文末尾参照)で求めた点数を比較した。
介護給付費の大幅削減にも
その結果、王子町では「カート未利用群」に比べて、「カート利用群」の要介護リスクが低くなった。これに対し河内長野市では両群に大きな差が見られなかった(上記グラフ参照)。このことからも、電動カートの日常的な利用が高齢者の外出を促進し、結果として介護予防につながる可能性が示された。なお、研究グループでは王子町のカート利用群は未利用群に比べて、今後6年間の介護給付費が1500万~2000万円程度低くなると試算している。
これまでにも、電動カートを地域モビリティとして導入することが、住民の外出機会の増加やポジティブな感情を強めることにつながるという研究報告は行われていた。しかし、研究期間が数ヵ月~1年程度のものが多く、要介護リスクへの影響について長期的に検証した研究は十分ではなかった。また、運行の継続性や運営体制の違いがどのような影響を与えるかという点についても明らかにされてこなかった。
外出促進などの効果期待
今回の結果を受けて研究グループでは「今後、ほかの地域での検証や長期的な追跡を通じて、さらなる知見を蓄積していきたい」とコメントしている。
※要介護・要支援リスク評価尺度…「バスや電車を使った外出をしている」など12の回答項目で構成される、要支援・要介護のリスクを示す評価ツール。合計48 点で、点数が高いほど「3年以内に要介護認定を受ける可能性が高い」とされている。










