2026年6月10日号  15面 掲載

お別れホスピタル/評:浅川澄一氏

2026年6月15日

 

沖田×華著 小学館 全16巻

 

 

お別れホスピタル

 

終末期に医療機関で行われる「鎮静」がテレビドラマで丁寧に描かれた。確実に死に至るが「医療行為」である。安楽死との近似性がありタブー視されてきた中、大胆な演出に見えた。4月11日放映のNHKドラマ「お別れホスピタル2」全2話の後編だ。ベッドに横たわる重度の間質性肺炎の患者(阿川佐和子)。死期を覚悟し娘と共に延命治療を拒否している。だが、夫(柄本明)には言えない。

 

呼吸が相当に苦しくなり、医師(松山ケンイチ)が「このままですと辛いです。楽になるように眠くなる薬を投与します。よろしいですか」と夫と娘に問いかける。

 

続けて「一度眠ってしまったら起きることはないです」。延命治療を望む夫は反対するが、「肺はもうだめなの。苦しむだけなの」との娘の説得で一転、応じる。

 

医師は患者に「薬入れますからね。だんだん楽になりますからね」と冷静に声を掛ける。その後、「明け方、息を引き取った」との声が入る。こうしたやり取りが14分も続いた。

 

ドラマではあるが、病院での鎮静場面とみていいだろう。患者家族も含め現場では日常的な光景のようだ。かつての「ひっそりと行われている出来事」( 村上陽一郎著「死の臨床学」)が様変わりだ。

 

 

病院での「鎮静」が意外に浸透

 

原作ではどうか。漫画誌「週刊ビッグコミックスピリッツ」で2018年から連載され、全83作が同様の書名で16冊刊行されている。第11巻の「カルテ63」に、間質性肺炎の患者家族が登場する。だが、医師の鎮静剤投与の場面は全くない。

 

原作で鎮静が出て来るのは、第3巻の「カルテ13」だ。「鎮静とは、鎮静剤を投与し意識レベルを下げて眠らせる処置――。処置後、痛みを感じないまま患者は死に至ると言われている」との説明がある。続けて「処置の安全性や、本人と家族の意志…倫理的問題が問われる医療行為だ」と注意を喚起している。

 

第13巻には、「早く鎮静かけたらいいのに」( カルテ77)、「( 患者は)先生に自ら鎮静を希望し――2日後に苦しむことなく亡くなった」(カルテ72)と鎮静に触れている。

 

NHKドラマでの鎮静に関する医師の発言は、原作のどこにもない。だが、どういう状況で鎮静が実行されるかがよく分かる。原作の意を汲んだと言えるだろう。

 

評:ジャーナリスト 浅川澄一氏

 

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