2026年7月15日号 3面 掲載
ICTで過疎地支える 訪問看護、秋田県南で利用者800名
AddCare(秋田県由利本荘市)は、2019年に創業し、「ごてんまり訪問看護グループ」として秋田県中央から南部で訪問看護の拠点を拡大。グループ全体で利用者約800名、スタッフ97名と、県内最大規模に成長。オンラインでのインスリン療法支援や死亡診断の支援を導入するなど、ICTにより過疎地での医療サービス提供につなげている。藤沢武秀社長に事業について聞いた。

AddCare 藤沢武秀社長
――法人を立ち上げたきっかけは
藤沢 由利本荘市の医療機関で勤務していたが、利用者に必要なケアを、現場の判断と多職種連携のもとで柔軟に提供できる環境を作りたいと考え起業した。
年齢層は幅広く25~64歳が働いている。1事業所あたりの人数は、秋田市など比較的大きな市は30名、過疎地の美郷町は6名程度。看護師の基本給は秋田県内の訪問看護の平均である25万円と変わらない水準だが、訪問件数などへインセンティブを付与。フルタイム職員の総支給額はオンコール無しでも40万〜55万円と比較的高い。
――グループのコンセプトは
藤沢 在宅医療を利用できない人を減らしたいという一点に尽きる。由利本荘市は神奈川県の半分に相当する面積ながら、訪問看護ステーションは5~6ヵ所のみ。移動距離を理由に利用を断らないようにしている。
――事業エリアは中央から県南です
藤沢 秋田県は人口減少率も高齢化率も全国1位。県内の市町村の8割以上が過疎地で、
当社の本拠地である由利本荘市もみなし過疎だ。出身地の大館市をはじめ、北部は人口減少が著しく、移動コストも大きい。本拠地ののある中央から県南に注力し、過疎地までサ
ービス提供できるようにした。
――AIなども活用しています
藤沢 SEの採用やプログラマーとの委託契約により、看護スタッフが直行直帰で勤務できるような仕組みを整えている。Google Apps Scriptを使うほか、看護記録に生成AIを活用。医療機関向け音声AIシステムを開発するmedimo(東京都港区虎ノ門)と実証実験を行ってきた。利用者との会話をもとにSOAP形式で記録を作成する仕組みである。現在はAIの活用により約半数のスタッフがSOAP形式で記録するようになり、リハビリなど、プランの根拠の明確化につながった。音声記録機能に絞れば、ほとんどのスタッフが活用している。
――過疎地が多いことから、ビデオ通話を活用した取り組みも
藤沢 事業所と利用者宅をオンラインでつなぎ、事業所にいる看護師から、利用者家族へインスリン投与の方法を指導している。診療報酬などの加算対象ではないが、医師が駆け付けられない地域では必要な業務だ。
遠隔で死亡診断支援
――遠隔死亡診断について教えてください
藤沢 死亡が予測される人に対し、本人・家族の同意があり、12時間以内に医師が対面で死亡診察を行うことが困難な場合に限り、研修を修了した看護師が、遠隔でつながった医師による死亡診断を支援できる。25年時点で実施事例は全国で5件だが、うち2件が当社の事例だ。2件とも、医師が出張で不在という状況だった。過疎地ではインターネット環境のない場所もある。SpaceXの衛星通信であるスターリンクにより、遠隔死亡診断時の動画送信なども可能になった。
――過疎地では在宅サービスの事業所が少ないことが課題です
藤沢 どこかの事業所が一人勝ちの状態ではなく、連携することが必須だ。今後、ICTを用いて事業所間で連携していきたい。BCPの観点からも人員の不足する事業所が事業継続できるシステムの構築を目指す。
■ ごてんまり訪問看護グループ
・設立:2019年
・本部:秋田県由利本荘市
・拠点(2026年7月時点)訪問看護ステーション7ヵ所
ほか、サテライト3ヵ所、居宅支援介護1ヵ所、ナーシングホーム1ヵ所










