2025年8月6日号  5面 掲載

老人ホーム入居紹介料問題を考える② 手数料ルール“見学誘致”軸に 【高齢者住まい事業者団体連合会×紹介会社 座談会】 

2025年8月11日

 

<①より続く>

 

 

――課題について整理すると、ポイントは大きく3つ。1つ目が紹介料の金額設定、2つ目が短期解約時の返戻方法、3つ目が手数料の発生条件

嘉門 3つ目について言えば、資料請求ベースの権利発生と見学誘致ベースの権利発生の2通りがあります。同一のホームに対して、A社は資料請求ベース、B社は見学誘致ベースとなると、運営法人は紹介料を二重に払わなくてはいけないのかという問題になります。

 

 

藤田 実際に、当社のグループ企業では二重に紹介料を支払ったケースがありました。入居契約に至っていて、それぞれの紹介会社との契約が該当する場合、債務不履行になってしまうためです。

 

 

あいらいふ 藤田敦史社長

 

 

光元 高住連の雛形では、基本的に手数料の発生は見学誘致のタイミングとしています。その上で運営事業者に向けた留意事項として「2種類の契約を締結している可能性があるため、よく確認してください」と注意喚起を行っています。

 

 

――これは統一した方が良いように思います

 Webサイトで広告事業を展開している立場からしても、見学同行や対面相談に対応している紹介会社が損をしないようにすべきだと思います。見学誘致や見学同行が基準で良いのでは。

 

 

LIFULL senior 泉雅人社長

 

 

田中 入居検討者は複数の紹介会社に問い合わせをするケースが多く、受けている相談内容からどこの紹介会社も同じ、もしくは同じようなホームを紹介することになります。運営事業者側からすると、自施設のために汗をかいてくれた紹介会社に手数料を払うというのが、理由付けしやすい。その紹介会社の相談員からしても「しっかりと相談者とコミュニケーションを取り、耳を傾け、その方にとって良いと判断するホームについて説明して納得いただき、見学予約に至った」というプライドがある。運営事業者と紹介会社が互いに納得するためにも、見学誘致をした紹介会社に対して、入居成約時に紹介料を支払っていただくのが最良だと考えます。

 

 

嘉門 問題になるのは、機会損失がある場合でしょう。例えばある入居検討者がWeb上でAというホームの資料請求をしたとします。その後に別の紹介会社に相談した場合、本当はABC3つのホームを提案したいけれども、Aホームに関しては資料請求をしているため紹介料をもらえなくなってしまう。そうすると、その相談者にはBCホームを提案することになってしまう可能性があります。そうなるとお客様、Aホームどちらにも機会損失が生まれてしまうため、見学のタイミングを基軸にした方が良いでしょう。成約に直接導いた1社に手数料を支払うのが良いという考え方です。

 

 

――契約書作りは消費者保護という観点からも非常に大切ですね

光元 消費者にとっての透明性を確保していくという観点で最も重要なのが、相談者に初めて相対する際に「私たちはこういう者です」ときちんと役割や責任などを示すための標準形を持つことです。

 

田中 そもそも届出制度は、紹介会社のためでも運営事業者のためでもなく、あくまで消費者保護のために作った制度です。そこをはっきり示していく必要があります。市原

厚生労働省「有料老人ホームにおける望ましいサービス提供のあり方に関する検討会」でも、紹介手数料や紹介会社と運営事業者との関係性などについて、しっかりと消費者に説明しているのかと有識者から質問がありました。

 

 

――その説明責任についてはどうでしょうか

田中 検討会では「相談者に対し、紹介会社がいくら手数料をもらっているか説明すべき」という意見もありました。実際にお客様から「紹介会社にいくら支払えば良いのですか」と言われる際、「当社に対して費用は必要ありません。ホームの方から手数料を頂戴します」と説明しますが、金額は言いません。最終的にどのホームに入るかもわかりませんし、紹介契約の中に秘密保持の条文が含まれているためです。

 

光元 有識者の意図として「消費者にとって自身に与えられる情報が、ホームと紹介会社との経済的な関係によって取捨選択されているのではないか」ということでしょう。しかし、金額はさておきどこからお金を受け取っているかを伝えれば、誰がどこで得をするのかは消費者にも分かる話となります。そういうことを伝えた上であれば、消費者も様々な想定をしながら相談するだろうと思います。

 

嘉門 紹介会社に求められているのは、「たくさんの情報を持っていて、その中から自分に合った情報をくれる」こと。そこを作りこむには当然、手間暇や時間・経費がかかります。その理解が得られると嬉しいですね。

 

 

<③に続く>

 

 

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