2026年7月15日号  4面 掲載

カスハラ対策、組織的に/相談件数増 早期解決も グッドタイムリビング

2026年7月19日

グッドタイムリビング(東京都中央区)は、入居者や家族によるカスタマーハラスメント対策を強化するため、2024年8月に「基本方針」「対応マニュアル」「ケースブック」を整備。組織的な対応体制を構築した。カスタマーハラスメントに対する意識改革と対応方法などの社内浸透に向けて試行錯誤を重ね、働く職員の安心感向上につなげている。

 

同社では、暴力や暴言、長時間拘束、過剰な要求、特定職員への執着など、職員に精神的・身体的な負担を与える事案が発生していたため、カスハラ対策を本格化した。

 

介護施設では入居者や家族と長期間にわたり関係性が継続するため、職員が負担を抱え込みやすい環境にある。「職員が『ある程度は仕方ない』と受け止めてしまう傾向があり、施設長などマネージャークラスにもその認識が見られました」と経営企画部の都築千弓氏は話す。

 

そこで、相談しやすい環境を整備し、組織として職員を守る仕組みづくりに着手。基本方針はリーフレット化し、全館に掲示することで、カスハラに対する基本姿勢を社内外に示した。

 

対応マニュアルでは、まず入居者の要求が正当な権利主張なのか、それとも過剰な要求なのかを見極めたうえで、脅迫的な言動や威圧的な要求、執拗な拘束などがないかを確認する仕組みを採用している。約1年かけて同社のコンプライアンス部門の職員が士業などに相談しながら形にした。

 

 

 

掲示しているリーフレット

 

 

ケースブックには、具体的な事例16件を収載。事例ごとに、「現場で対応可能」「本社に報告する」「弁護士に相談する」など対応区分を明示。現場職員が迷わず判断できるよう整理した。現場で将来的にカスハラに発展しそうな事例が生じている場合は、丁寧な傾聴や説明などで収まる部分もある。

 

また、外部の専門弁護士事務所とも契約。本社休業日や夜間、休日であっても迅速な初動対応が取れる体制を整えている。施設長が本社を介さず直接相談することもできる。

 

制度導入後の課題は現場への浸透だったという。「職場環境を守るため」という目的意識を全職員に共有し、取り組みを肯定的にとらえてもらえるよう工夫した。

 

 

職員の意識改革に注力

 

「介護現場ではよくあること」と固定観念の払拭に苦労する部分もあった。マニュアルなどを策定し1年経過時点で職員向けに行ったアンケートで、カスハラ事案の一部が組織的に共有されていない状況がわかったため、改めてマネージャークラスの意識改革も含めた浸透策を強化。施設長自身が対応方法を周知するための研修を実施するとともに、職員に個別ヒアリングをし、情報共有しやすい職場づくりを進めた。

 

介護現場のカスハラは、認知症が背景にあるケースも少なくない。同社では、直ちにハラスメントと判断するのではなく、状況の共有や原因分析、ケア方法の見直し、医療機関との連携などを行う方針を採っている。実際に、認知症が要因となっているケースでは、医療的な介入によって状況が改善した事例も複数あったという。

 

24年8月から26年2月の間に、暴言や暴力、過剰要求など11件の事例の相談が寄せられた。こうした取り組みで、職員からの相談件数増加に加え、警告文送付、弁護士への相談などで、早期に解決できている事案が生まれる効果も出ている。

 

「カスハラ対応は初動が大切。対応をフローで整え、組織で考える文化を醸成した効果は大きいです」と経営企画部副部長の桑原健氏は話す。同社では、職員の職場環境を守ることがサービス品質の向上や他の入居者の生活環境の保護にもつながると考えており、今後も定着に向けた運用を進めていく考えだ。

 

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