2026年8月5日号 10面 掲載
「不の解消」のためにM&Aを活用する/村田裕之氏

多くのシニアにとって、いま最大の不安は物価高(インフレ)でしょう。テレビでは年金暮らしのシニアが物価高にあえぐ姿が頻繁に報道されています。これらの人の多くは、本連載第101回で触れた「デジタル金融弱者」と思われます。
仮に、彼らが資産運用によって年金以外の収入を得られ、現預金の目減りを防ぐ等のインフレ対策ができると知れば、利用したいと思うでしょう。しかし、現状の課題は、彼らを対象にした適切な支援サービスが存在しないことです。
「ドコモ銀行」デジタル金融支援
デジタル金融弱者の共通の特徴として、
▽パソコンを使わない、または操作が苦手
▽スマホは使えるが金融サービスの利用は少ない
▽金融資産は現預金が大半
▽投資経験はなく、投資は危ないと思っている
――が挙げられます。
こうした人たちが自分でインフレ対策を行うには、
⑴パソコンやスマホでネット証券・銀行を使える
⑵必要かつ適切な情報をネットで探し出せる
⑶保有金融資産を年4%程度で運用できる(インフレ率は政府・日銀目標値2%を前提)
――能力が必要でしょう。
⑴と⑵のための指南は、パソコン・スマホ教室で可能です。これらの教室でネット証券・銀行の使い方の教習は、「操作方法に徹する」のであれば法的に問題ありません。
しかし、⑶のための指南は、いわゆる金融商品取引法(金商法)の領域のため、パソコン・スマホ教室では不可能です。逆に銀行や証券会社が⑴と⑵のための指南を行うには、多くの手間とコストがかかります。このようにデジタル金融弱者支援には多くの壁が存在します。

携帯電話店舗がデジタル金融支援の最前線になる?
ところが、今年8月3日から開始する「ドコモSMTBネット銀行」(通称「ドコモの銀行」)がこの壁を壊しそうです。従来NTTドコモは、店舗でシニア向けスマホ教室を多数実施しており、ドコモの銀行が資産運用サービスを提供すれば、⑴から⑶まで一貫した支援を提供できます。
携帯キャリアによる銀行のM&Aが、デジタル金融弱者の「不の解消」の切り札になる可能性があります。

村田 裕之 氏
村田アソシエイツ代表
東北大学特任教授 87年東北大学大学院工学研究科修了。日本総合研究所等を経て02年3月村田アソシエイツ代表。06年2月より東北大学特任教授。わが国シニアビジネス分野のパイオニアで多くの民間企業の新事業開発に参画。高齢社会研究の第一人者として講演、新聞・雑誌への執筆も多数。著書に「成功するシニアビジネスの教科書」(日本経済新聞出版社)など多数。









