2026年8月12日号  9面 掲載

【対談:外国人人材活用とDXを考える】「外国人25%超で離職増」小平氏、「家族介護の再来は防ぐ」一谷氏

2026年8月15日

介護現場では、スタッフ全体に占める特定技能など外国人人材の割合が高くなっている。その一方で「外国人人材が増えたことで、教育・指導などに時間を要するようになり、組織としての生産性が低下しているのではないか」という指摘もある。「介護現場における適切な外国人人材比率」について、富山短期大学健康福祉学科の小平達夫教授と、介護事業経営者でもある一谷勇一郎衆議院議員に意見交換をしてもらった。

 

 

小平達夫教授(左)と一谷勇一郎衆議院議員(右)

〈小平達夫氏プロフィール〉 〈一谷勇一郎氏プロフィール〉

銀行員などを経て2014 年に富山県の大手医療・福祉グループのアルペン会に入職し法人副本部長を務める。18 年より富山短期大学准教授、25 年4 月より同短大教授。主な研究テーマは、外国人介護人材の確保・育成・定着、外国人介護人材と日本人介護職の協働、介護福祉経営など。

2003 年整骨院を開業。11年法人化し介護事業を開始。19 年の医療・介護報酬改定の結果を見て「介護保険財政破綻の問題を先送り」と危機感を覚え、現場の声を国に届けようと政治家を志す。21 年の衆議院議員選挙に日本維新の会公認で出馬し当選。24 年の選挙では落選するが、26 年の選挙で当選。

 

都市部で外国人増加

一谷 24年前からデイサービスを運営しています。介護事業においては、特定技能や技能実習生などの外国人人材活用は欠かせません。

 

小平 組織マネジメントの視点で考えると、外国人人材があまり多すぎるのは課題です。私がさまざまな事業所にヒアリングをしたところ、外国人人材が一定割合以上になると離職率が増加する傾向が見られました。

 

一谷 言葉の壁がありますから、教育や指導も時間をかけて丁寧に行う必要があります。また介護記録などの書類も間違いないかチェックしなくてはいけませんから、日本人スタッフの業務量は増えることがあります。それが離職の原因になると考えられますね。

 

小平 外国人の離職も増える傾向にあります。あまりに外国人が多いと、その時間帯に勤務するスタッフの大半が外国人ということもあります。すると「何か尋ねたくても、近くに日本人スタッフがいない」というケースが出てきます。これが仕事をする上での不安につながるだけでなく「介護職として成長できない」という不満にもなります。

 

一谷 外国人の割合がどの程度になると、そうした問題が出てきますか。

 

小平 私は「育成途上比率」という言葉を用いており(囲み参照)、これが25%を超えると組織の成長という面で課題が出てきます。近年はこれを超える事業所が出てき始めました。

 

一谷 比率は都市部と地方など地域によって違いがあるのでしょうか。

 

小平 ここ1~2年は、東京や大阪など大都市圏の介護事業所で外国人人材の数が増えています。この背景には、都市部と地方の賃金格差があります。転職が可能になった外国人が、より高い給料を求めて都市部の介護事業所に移るのです。

 

 

介護報酬改定に期待

 

一谷 地方からすれば、せっかく自分たちが育成した人材が流出する形になります。「育て損」にならないために、介護福祉士手当の充実やキャリアパス制度の構築など、処遇をしっかりと整えていく必要があるでしょう。

 

 

助成制度には課題も

小平 今後、日本人労働者数はどんどん減少するため外国人人材の力に頼らざるを得ない部分は増えてきます。育成途上比率の上昇は避けられません。こうした中で必要なのは「25%を超えない」のではなく「25%を超えても問題のない組織の構築」だと思います。カギとなるのがDXです。介護事業所にヒアリングする中で「日本語能力N2でも、記録業務に関しては日本人スタッフのフォローが必要」という声が多くありました。ここでICTを活用するだけでも、業務負担は大きく軽減されます。

 

一谷 私が経営する介護事業所では早い段階からICTを積極的に導入し、新型コロナウイルス感染症の流行前から事務職は完全リモートワークにしていました。しかし業界全体でみれば、DXへの取り組みはまだまだです。理由には、ICT機器導入に関する助成や補助の対象がイニシアルコストだけで、ランニングコストが考慮されていないなどが考えられます。政策に関わる部分なので、介護業界出身の議員としてもっと国に訴えなくてはいけないと考えています。

 

小平 また、ICT機器を導入すればいい訳でもありません。翻訳で言えば、アプリなどを活用するのは、単に「言葉の壁を局所的に補完する」ことであり、ICT活用としては第1段階です。その先の「音声入力を元に、申し送りや事故報告書などを自動作成する」、さらに「AIが危険を察知しその人の母国語で警告・指導を発する」といったレベルまで進まないと、本当の意味での業務効率化にはつながりません。

 

一谷 スマホで翻訳する場合、機器を取り出し、入力する手間がかかります。やり取りに時間はかかりますから業務効率化の効果は限定的です。「デバイスは見えないことが大事」です。そのレベルに至るまでICT機器は進化していくでしょうから「これでDXは完了」と考えずに常に次の段階を見据えて進めていく必要があります。中小企業はDX困難

 

小平 ところで来年の介護報酬改定ですが、DX推進に関する加算や助成などについては期待してよいのでしょうか。

 

一谷 期待はできると思います。しかしデジタルへの移行期間中はどうしても生産性が低下します。中小・零細事業者はそれに対応できる余力がないという現実もあります。また、助成の申請も実際には経営者自身で簡単にできますが「自分では申請は無理」と考えて、外部の専門家に依頼するケースも少なくありません。結果として助成額全てを機器導入に使えないといった点も課題です。

 

小平 経営者の相当な熱意がないとDXは難しいということですね。

 

一谷 外国人人材活用を進めていくにはDXは不可欠です。私は事業を通じて、介護の問題で崩壊している家族を数多く見てきました。家族が介護をしなければならない時代の再来は避けなくてはなりません。介護事業者は事業存続のためにもDXに積極的に取り組んでもらいたいと思います。

 

 

 

 

この記事はいかがでしたか?
  • 大変参考になった
  • 参考になった
  • 普通
全ての記事が読める有料会員申込はこちら1ヵ月につき3記事まで(一部を除く)閲覧可能な無料会員申込はこちら

関連記事



<スポンサー広告>