2026年8月5日号 7面 掲載
入居時における中古エアコンの新品交換要求と賃貸人の義務/弁護士 家永勲氏

エアコンの交換を求められたら 「必要な修繕」に当たるかがポイント
賃貸住宅の賃貸借契約後、入居者から「部屋に備え付けのエアコンが中古品なので新品に取り替えてほしい」と要求されることがあります。貸主はこの要求に応じる必要があるでしょうか。
照明器具やテレビなど、借主が持ち込む物品については賃貸住宅の設備とはいえず、補修や取り替えも借主の負担で行われます。他方、賃貸住宅にあらかじめ設置されているエアコンは貸主の所有物( 設備) であるため、借主が自由に取り替えたり、無断で別の設備を設置したりすることは原則できません。
民法では、貸主は借主が建物の使用及び収益をするのに必要な修繕を行う義務を定めています(民法606条1項)。エアコンは建物そのものではありませんが、建物の使用及び収益に付随して必要となる設備であるため、不具合が生じた場合には貸主に必要な修繕を行う義務があると解釈されます。問題は、新規入居にあたり中古エアコンを新品に取り替えることが、この「必要な修繕」に該当するか否かです。
民法上の修繕義務は、借主が要求すればすべて認められるわけではありません。貸主に修繕義務が発生するのは、設備に不具合があり、修繕をしなければ物件の使用及び収益が妨げられる場合に限られると解されています。具体的には、エアコンが故障して使用できない場合や、冷暖房機能が著しく低下している場合などが該当します。正常に機能しており通常の使用が可能である以上、「中古品である」という理由だけでは、借主による取り替え要求の法的な根拠にはなり得ないのです。
「新規入居なのだから新品にすべきだ」という主張も、法的に成り立ちえません。賃貸借契約は、立地や建物の築年数、設備の状態などの条件を総合的に考慮して賃料を定め、締結されるためです。したがって、契約時に新品へ取り替える旨の特別な合意がない限り、現状の設備を前提として契約を締結したものと解釈されます。
借主がどうしても新品にこだわるのであれば、借主の費用負担による買い替えを検討することになります。その場合、後日のトラブルを防ぐため、退去時に借主からエアコンの買い取り請求や費用請求( 造作買取請求など)を行わないなど、費用負担に関する条件をあらかじめ書面などで合意しておくことが重要です。

弁護士法人ALG&Associates 執行役員・弁護士
家永勲氏
【プロフィール】
不動産、企業法務関連の法律業務、財産管理、相続をはじめとする介護事業、高齢者関連法務が得意分野。
介護業界、不動産業界でのトラブル対応とその予防策についてセミナーや執筆も多数。









