2026年8月12日号  11面 掲載

【介護経営のリスクマネジメント】カスハラ対抗策特集⑤顧客からのセクハラ/安全な介護 山田滋氏

2026年8月13日

 

今回は第5回目として顧客からのセクハラへの対抗策について説明します。

 

前回はこちら

 

私たちは顧客からのセクハラを社内の社員同士のセクハラと区別して、カスハラに含めて防止に取り組んでいます。厳密に言えばセクハラはカスハラ防止法の対象ではありませんし、既にセクハラ防止法で事業者に防止措置が義務付けられています。

 

しかし、防止措置が義務付けられたにもかかわらず、顧客から従業員へのセクハラ対策が放置されている現実があるのです。テレビ局が顧客による社員への性加害行為を放置して大きな問題になりましたが、どこの業界でも同じように放置されています。

 

 

■意識が低い介護業界

前述のテレビ局の社員に対する性加害放置とは少し異なりますが、介護業界も利用者からのセクハラに対して寛容すぎます。「認知症の利用者のセクハラだから仕方がない」「少しくらいのセクハラに大騒ぎしてたら一人前のヘルパーになれない」という言葉を、管理者から聞いてビックリしたことがあります。

 

 

防止法で防止措置義務化

 

カスハラ防止法施行前の現時点では、利用者からのカスハラ行為よりセクハラ行為の方が事業者の防止措置の義務は大きいのです。整理すると次のような図になります。

 

相手が認知症の利用者であっても、受ける被害の大きさ(職員が感じる苦痛)は変わりませんから、事業者は直ちに防止措置を講じなくてはならないのです。もちろん、判断力・責任能力がある利用者への対抗措置とは異なりますから、「警察に訴えるぞ」というわけにはいきません。では、どのように対抗措置を講じたら良いのでしょうか。

 

 

 

 

■精神保健福祉サービスに変更してもらう

認知症は精神疾患の1つと考えられています。精神疾患が原因で自分をケアする職員に重大な加害行為を行ってしまう利用者がいたら、この利用者にはどのように対応するのが正しいのでしょうか。正しい対応は、精神保健福祉サービスに切り替えてもらうことです。他人に重大な加害行為をする精神病患者は、措置入院という対応もあり得ますから同様に考えれば良いのです。

 

ある特別養護老人ホームでは、80歳の認知症利用者で移乗介助の時に女性職員の下着の中に手を入れる利用者が居ました。極力男性職員の対応としましたが限界があります。そこで、家族にきちんと実態を話し、施設管理者同行の上で県の精神保健福祉サービスの相談窓口に行きました。窓口の職員の方が大変手厚く対応してくださり、無事に特養から退所してもらいました。

 

ハラスメントの放置はブラック企業として、求職者から敬遠されます。介護職員は女性が多いのですから、企業にとってセクハラ対策は人材獲得策であることを経営者は考えなくてはなりません。

 

 

 

 

 

山田滋 株式会社安全な介護 代表

早稲田大学法学部卒業。現あいおいニッセイ同和損害、インタリスク総研を経て2013年より現職。介護現場で積み上げた実践に基づくリスクマネジメントの方法論は、「わかりやすく実践的」と好評。各種団体や施設の要請により年間150回のセミナーをこなす。著書に「新版安全な介護(ブリコラージュ)」「完全図解介護リスクマネジメント上下巻(講談社)」など多数。

 

この記事はいかがでしたか?
  • 大変参考になった
  • 参考になった
  • 普通
全ての記事が読める有料会員申込はこちら1ヵ月につき3記事まで(一部を除く)閲覧可能な無料会員申込はこちら

関連記事



<スポンサー広告>