2026年8月19日号 34面 掲載
見守りカメラ活用で転倒事故対策 入院減少で入居率にも貢献

社会医療法人中山会(宇都宮市)が運営する介護付有料老人ホーム「宝木荘」(同)は、AI見守りカメラを活用し、転倒・転落事故の予防と発生後の原因分析に取り組んでいる。これによって転倒・転落事故が減少、職員の負担軽減や入居稼働率向上にもつながっている。

介護付有料老人ホーム宝木荘 大垣治彦施設長
宝木荘では、施設長の大垣治彦氏が「AIテクノロジーの活用による働きやすい職場環境づくり」を重要な役割として掲げ、約12年間にわたり、生産性向上と介護の質向上に向けた取り組みを進めてきた。
「業務の省力化だけが目的ではなく、現在働く職員が長く勤務できる環境を整えること、利用者のQOLを高めることを目的としている」と大垣氏は言う。
情報共有システムやインカム、AI音声入力、eラーニング、介護ロボットなど、複数のICT機器を組み合わせて活用している。最近、特に力を入れているのがAI見守りカメラの活用だ。東電タウンプランニングの「AceCare」を全居室・全フロアに設置。
従来の見守りセンサーでは、離床や転倒などの発生を通知することはできても、その背景にある利用者の動きや環境との関係を把握することは難しかった。一方、AI見守りカメラでは、事故発生前後の映像を確認することで、「なぜ転倒したのか」「どのような動作があったか」を分析できる。事故原因を「職員や入居者の不注意」や「偶発的な出来事」として処理することなく、環境面やケア方法の改善へとつなげられる。
例えば、車椅子利用者で就寝時間帯に転倒が発生したケースでは、映像を確認したところ入居者は車椅子のブレーキをかけ忘れていることに加え、転倒前に自室で工作をする様子が確認できた。そこで事故対策として、ブレーキのチェックだけでなく、日中の活動量を増やすことで夜間の安眠につなげるといった根本的な対処ができた。
AI見守りカメラによる成果として、転倒・転落事故の減少が挙げられる。2025年1月から現在まで、転倒による骨折・手術入院は発生していない。25年度は入居稼働率も平均98%を維持できた。26年度6月までの転倒件数は16件で、25年度6月までの29件から13件減少した。

日中の活動量を増やし、夜間の安眠につなげる
■導入している機器
▽ AI見守りカメラ「AceCare」
▽見守りセンサー付きカメラ「RX-5」
▽ AI 音声入力 「Blue Ocean Note Pad」
▽骨伝導イヤホン・インカム「IP200」
▽情報共有システム「MeLL +(family)」
■主な取り組みの効果
▽ 2025年度の転倒件数24 件減少(24年度比)
▽同入院延べ件数33件減少(同)
▽ 2025年1月より転倒による骨折・OP入院 “ゼロ”
■経営への影響
▽入居率・稼働率98%を維持、待機者あり
▽夜間巡視回数 225回/ 日→ 50回以下/ 日
▽離職率 24年度0%
▽残業時間 1時間/月
職員の負担軽減にも大きな効果を発揮している。救急搬送時には転倒に至った経緯を医療機関へ説明でき、医師への正確な情報提供がしやくすなった。また、AIによる事故報告書作成の仕組みづくりも進めている。
AIが映像を解析し、転倒までの流れや原因、再発防止策を整理する。具体的な事例として、96歳女性のベッドからのずり落ち事故では、AIが映像から一連の動きを整理した。そのうえで、宝木荘で採用しているSOAP形式(主観情報・客観情報・評価・計画)の記録体系に沿ってAIがレポートを出力した。今後、記録システム「ブルーオーシャンノート」との連動で業務効率化をさらに進める方針だ。
宝木荘では毎月1回、開発企業とテクノロジー委員会を開催し、現場で発生している課題や必要な機能について検討。開発企業へとフィードバックしている。
その結果、職員の意見をもとに、端座位になった時点でアラートが鳴る機能が開発された。導入後、以前は1日に約5回発生していたが現在はゼロになったとしており、現場の気づきをシステム改善につなげた事例となっている。













