
大企業系か小規模事業者か
経営母体が大企業の施設のほうが、小規模事業者よりも安心と思われがち。しかし先入観にとらわれることなく、それぞれの特徴を理解することが重要です。
施設の事業規模や経営母体による違い
高齢者施設を選ぶ際に、念頭に置いておきたいチェックポイントのひとつが、事業の経営母体です。現在、高齢者施設の運営には、医療法人や社会福祉法人だけでなく、不動産会社や食品会社、出版社などさまざまな民間の大企業が参入しています。こういった高齢者施設は、多くの場合、事業規模が大きく、複数の施設を運営しているのが一般的です。これに対して大企業の経営母体を持たず、地元の介護事業者等が地域で少数の施設を運営している地域に根差した小規模の事業体も少なくありません。
大企業イコール安心とは限らない
多くの場合、大企業の経営母体を持つ施設の方が、小規模事業者の施設よりも社会的な信用が高く、安心できると考えられがちです。そういった見方は、間違ったものではありません。しかし必ずしも、「大企業が経営母体だから安心」というものではないのです。
経営母体が大企業であっても、事業譲渡されたという事例もあります。だからこそ施設の経営母体は、あくまでも施設選択のチェック項目のひとつにすぎないと考え、施設そのものの運営状況や、職員の質などを見極める必要があります。
財務諸表なども確認する
大企業が経営母体の施設のメリットは、基本的には安定的な事業経営であり、施設の規模の大きさやグレードの高さでしょう。スタッフや専門職など人材の確保や配置についても、大企業系施設のほうが比較的安定的です。一方で、費用が高額であるほか、経営母体の他事業の経営悪化が、施設の運営に影響を与える可能性があるというデメリットもあります。
小規模事業者の施設は、経営の安定性は一歩譲りますし、施設規模や充実度もそれほど高くないかもしれません。人材確保に苦労をしている施設も少なくありません。しかし小規模だけに、サービス提供について臨機応変な対応がしやすいというメリットがあります。また、職員はもちろん経営者の顔も見える、アットホームな雰囲気や地域に根差した事業運営なども、小規模事業者のメリットです。
このように経営母体の大小は、必ずしも施設の運営状況を左右するものではありません。そこで、経営母体の大小に関わりなく入居を検討する際には、施設見学や体験入居と併せて、事業主の公表する財務諸表、入居率や退去率などもしっかりと確認することが大切です。
施設の経営母体によるメリットとデメリット
■経営母体が大企業の施設
【メリット】
【デメリット】
■小規模事業者の施設
【メリット】
【デメリット】
出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社
関連するガイド
「老人ホーム・介護施設の選び方・手続き」アクセスランキング
- 高齢の母が骨折で入院!退院後、一人暮らしの生活は難しそう…
- 死ぬまでにかかるお金を老人ホームの費用を含めて計算
- 両親共に元気だが90歳代。老人ホーム選びを始めたい
- 要介護はいくつまで? 要支援1から要介護5までの7段階とは
- 自立型有料老人ホームとは? 健康型・住宅型・介護付きの違い
- 父親が認知症と診断…母一人で介護できないし独居生活も心配
- 年老いた両親の面倒はどう見る? 別々の介護施設にならない方法
- 認知症が進行して有料老人ホームから特養への転居を求められた
- 親を介護施設に入れたいが特養など老人ホームの空きがない…
- 特養・老健・介護療養型医療施設・介護医療院の費用の違い
- 軽費老人ホームとは? A型・B型・一般型ケアハウスの違い
- サービス付き高齢者向け住宅(自立者向け)とは
- 老人ホームへの入居を拒否する認知症の母親の住み替えはどう説得?
- 老人ホームの利用権方式など契約形態や支払い方法
- 離れて暮らす高齢の母親の一人暮らし。頭も体も弱ってきて心配