
施設か自宅かを決める分岐点
多くの人が心身の衰えを自覚する80代ころになって住み替えを考え始めますが、状況を客観的に判断し、早めに住み替えを検討することが重要です。
心身の衰えを自覚してからでは遅い
高齢者の住まいを考える上で、住み替えについてどの段階で考え始め、どこで決めるかということは、その後の暮らしに大きな影響を与える重要なポイントです。多くの場合、高齢者自身が80代くらいとなり、心身ともに衰えを自覚してから住み替えを考えることが多いようですが、病気になったり、足腰が弱くなったり、重い介護が必要になってから住み替えを考えるのは、ベストなタイミングとはいえません。そうなる前、本人が健康なうちに安全な住まいへ住み替えることが重要であり、そのようなタイミングでの住み替えが、安心で安全なシニアライフにつながるといえるでしょう。
早めの住み替えは健康寿命も延ばす
子どもの立場から、親の住まいの住み替えを考える場合も同様です。親に手厚い介護が必要になってからの住み替えとなると、住まいの種類や選択の幅が狭くなってしまいます。それだけでなく、高齢者の場合、心身ともに元気なうちにバリアフリーが充実している住まいなどに住み替えることで、転倒などの事故を防ぎ、ひいては健康寿命を延ばし、介護の必要性を軽くすることにもつながるのです。
自分たちの状況を客観的に判断する
住み替えのタイミングは、本人の心身の状況だけでなく、現在の住居・環境、家族事情、資産や収入などによっても異なってきます。こうした点から、自分または親の置かれた状況を客観的に判断するために、下記の図に示した5つの項目で、自己診断をするとよいでしょう。
老後の生活に必要な条件
1.自宅形態:住まいの形はバリアフリーで老後の生活に適していますか?
2.生活環境:自宅周辺の生活環境は便利ですか?
3.医療・介護環境:近くに病院や介護事業所が複数整備されていますか?
4.家族事情:老後生活を支えてくれる家族(子)はいますか?
5.資金状況:資産と収入は必要額がありますか?
住み替えのタイミング
■心身ともに元気
介護認定:自立
状況:頭もしっかり身体も元気で自立生活
【住まいに必要なこと】
バリアフリー住宅
■生活不安
介護認定:自立(非該当)
状況:まだ元気だけれど、ひとり暮らしだと不安が多い
【住まいに必要なこと】
緊急コール、職員常駐
■弱ってきた
介護認定:要支援1~2
状況:足腰が弱ってきたが、手助けがあれば自立生活ができる
【住まいに必要なこと】
見守り、生活支援
■介護が必要
介護認定:要介護1~2
状況:訪問ヘルパーや家族の介護で自宅生活が何とか可能
【住まいに必要なこと】
介護体制、医療支援
■中~重度の介護
介護認定:要介護3~5
状況:夜間も介護が必要で介護保険だけではまかなえない
【住まいに必要なこと】
手厚い介護体制、医療との連携
出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社
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