高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて

重要事項説明書のここをチェック

高齢者施設選びや契約で、最も重要となる情報が記載されているのが重要事項説明書です。内容をしっかりと確認し、疑問点を明らかにしておきましょう。

重要事項説明書とは?

 「重要事項説明書」は、その施設を運営する事業者の概要、提供するサービス内容、設備、職員の体制、費用など、施設と入居に係わる重要な情報をまとめたものです。
 有料老人ホームや介護施設等は、それぞれの施設で必ず重要事項説明書を作り、サービス提供を望む人に、それを示さなければなりません。このため、住み替え先となる高齢者施設と契約を結ぶ際、事業者は入居希望者との間に重要事項説明書の書面を交わし、記載内容を口頭で明確に説明することが義務付けられています。

重要事項説明書は早期に入手し熟読しておく

 重要事項説明書は、入居を希望する人が施設を選ぶための最も重要で基本的かつ詳細な情報源です。このため必ず、住み替え先の候補となる施設選びの段階で、早期に入手し、熟読しておくことが大切です。
 まれに、入居先を探している段階(その施設との契約を前提としていない段階)では重要事項説明書を見せたがらない施設もあります。そのような施設は、情報公開に前向きでないことはもちろん、入居希望者に事前に知られたくない情報がある可能性が高いので、住み替え先の候補から外すことも考えましょう。
 なお、有料老人ホームについては、必ず重要事項説明書を都道府県もしくは権限譲渡された市区町村に提出する必要があると同時に、それぞれのインターネット上のホームページで公開しているところもあるので、仮に施設が公開を渋るような場合でも、自分で調べて確認することが可能です。

内容が詳細な施設ほど信頼できる

 重要事項説明書を見る上で重要なのは、どれだけ詳細に施設の情報が記されているかということです。たとえば、介護付き有料老人ホームであれば、利用料は居住費、管理費、介護サービス費、その他の費用など、その科目は複数にわたり、しかも居室のタイプが複数あるような場合、それぞれで料金が異なってきます。こうした情報が細かく記載されているほど、透明性の高い施設であり、情報開示に前向きな施設、ひいては入居者に誠実な施設ということにもつながるのです。

重要事項説明書でチェックすべき重要ポイント

 重要事項説明書の内容で、まずチェックしておくべき項目は、「サービス内容」と「職員体制」です。サービスは目で見てチェックできませんから、どんな職種のスタッフが何人いて、どのようなサービスを提供するのかを書面でしっかり確認します。協力医療機関、具体的な協力の内容も示されていますので、しっかり見ておきましょう。
 さらに重要な部分が、「入居に当たっての留意事項」です。中でも、施設からの契約解除の条件と、要介護時における居室の住み替えに関する事項は、住み替え後の生活にとってたいへん大きな影響を与える項目ですから、しっかりと読み込み、内容に不明点や疑問点があれば、施設に問い合わせて確認しましょう。
 たとえば、契約解除の条件でよくみられるものに、「入居者の行動が他の入居者や従業員の生命に危害を及ぼす恐れがあり……」という一文があります。この場合、ここでいう「生命の危害」とは具体的にどの程度のものなのか、「恐れ」というのはどのような状態なのか、とてもあいまいです。こうした場合は、具体的な判断基準や事例を示してもらうことで、理解がしやすくなり、入居者と施設との間の認識のすれ違いや理解の齟齬も防ぐことができます。

有料老人ホームの重要事項説明書の内容

❶ 事業主体概要

 記入者、所属先名、更新年月日のほか、ホームを運営する法人の所在地、種類、連絡先、会社設立日、その会社の主な事業内容等が記されている
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❷ 有料老人ホーム事業の概要

 ホームの名称、所在地、管理者に関する情報、連絡先、事業開始年月日等が記されている
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❸ 建物概要

 入居する建物の概要(規模、構造、所有者等)と、居室の仕様や共用施設についてが記されている
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❹ サービスの内容

【全体の方針】

 ホームの運営方針やサービスの内容が記されている。外部に委託するサービスについては、委託先が記されている

【介護サービスの内容と医療連携の内容】

 介護付きホームの場合、介護サービスの内容と、医療連携の内容が記されている

【入居後に居室を住み替える場合】

 入居後に居室を住み替える場合の判断基準や手続き方法、追加費用等が記されている

【入居に関する要件】

 ホームに入居する条件や解約条件が記されている
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❺ 職員体制

【職種別の職員数、資格を有している介護職員の人数など】

 ホームで働く職員の職種と人数の内訳が記されている

【特定施設入居者生活介護等の提供体制、職員の状況】

 特定施設入居者生活介護等の提供体制(利用者ひとりに対する介護、看護職員の比率)と職員の状況(職員の採用時期、勤続年数など)が記されている
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❻ 利用料金

【利用料金の支払い方法】

 ホームに住む権利の種類や利用料金の支払い方法、条件が変わった際の費用など、費用に関する条件が記されている

【利用料金プラン、利用料金の算定根拠】

 ホームの利用料金のプランが記されている

【前払金の受領】

 入居する時点で前払金を支払う場合、前払金の具体的な内容が記されている
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❼ 入居者の状況

【入居者の人数】

 ホームの入居者人数、性別、年齢、要介護度、入居期間など、入居者の状況が記されている

【入居者の属性、前年度の退去者の状況】

 入居者の属性と前年度の退去者の状況が記されている
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❽ 苦情・事故等に関する体制

 入居者からの苦情や事故などに対応する窓口、事故が起きたときの対応、事故防止策、第三者による評価の実施状況について記されている

  入居希望者への事前の情報開示

 ホームの契約書や経営状況などの資料を、希望者にどのような形で公開しているかが記されている

❾ その他

 運営懇談会、個人情報保護、緊急時の対応、指針に合致していない項目など

  重要事項説明書説明後の署名欄

 重要事項説明書説明後に署名する欄が記されている

出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社​