
介護保険の費用と自己負担
介護保険サービスの利用料金は、多くの場合1~3割の自己負担額ですが、全額自己負担の費用もあります。一方、費用負担を軽減する制度も用意されています。
費用の自己負担の多くは1~3割
介護保険のサービスを利用する場合、要介護認定で要支援または要介護と認定されれば、介護サービスの利用料金に関する自己負担額は、多くの場合1~3割となります。その場合、サービスを利用した事業者に、かかった費用の1~3割を支払えば良く、残り7~9割の費用は「保険給付」として市区町村が負担します。
ただし、介護保険制度では、希望するサービスを無制限に利用できるわけではありません。1~3割で利用できる範囲の上限が「支給限度額」として1カ月単位で決められており、その限度額は、要介護認定で決められた要介護度によって異なります。その上で、支給限度額の上限を超えると、その分のサービスは全額が自己負担になります。
介護保険サービスの対象にならない費用もある
施設や住宅に入居する際に気を付けておきたいのが、自己負担が1~3割となる保険給付の対象とならないサービスや、実費負担となる費用があることです。
たとえば、特別養護老人ホームや介護老人保健施設、介護医療院などでの居住費(賃料・光熱費など)や食費、特定施設やグループホームの家賃や管理費などは、いずれも全額が利用者の自己負担となります。
現物支給と償還払い
介護保険のサービスを利用した場合、費用の支払い方法には2つの種類があります。先に述べた、サービスを利用した事業者に、かかった費用の1~3割を支払い、残り7~9割の費用は「保険給付」として市区町村が負担するものを「現物支給(法定代理受領)」と呼びます。
一方で、高額介護サービス費をはじめ、福祉用具購入費や住宅改修費といった一部のサービスについては現物支給となりません。この場合、利用者が事業者や施設にまず全額を支払い、その明細を記した領収書を市区町村に提出して、費用の7~9割を後から受け取ります。これを「償還払い」といいます。


自己負担を軽減する「高額介護サービス費」
介護保険のサービス利用料については、利用者の自己負担を軽くするための制度も用意されています。その代表的なものが、高額介護サービス費の支給制度です。
これは、介護保険のサービスを利用した際、1カ月分の合計の利用料金が一定の上限額を超えた場合、申請をすると所得や課税状況に応じて上限を超えた分の費用が高額介護サービス費として払い戻される制度です。
対象となる世帯の所得に応じて月額の負担上限額を、生活保護を受給している人なら1万5,000円、現役並み所得者に相当する人がいる世帯の人の場合は4万4,400円までとしています。
高額介護サービス費は償還払い
高額介護サービス費支給制度で注意してほしいのは、この制度では特別養護老人ホームや介護老人保健施設などの居住費や食費、生活費などを含むことができないということです。自宅で介護サービスを受けている場合の福祉用具の購入費や住宅改修費などについても、高額介護サービス費の支給対象とはなりません。
また、高額介護サービス費の支給は「償還払い」で行われます。つまり、まず利用者が全額を負担した上で、その請求書などを添えて申請することで、上限を超えた分の費用が返ってくるのです。このため、後で返ってくるとはいえ、一時的には全額を支払わなければなりません。
居住費や食費を減額する補足給付
高額介護サービス費と並ぶ費用負担軽減のための制度が、「補足給付(特定入所者介護サービス費)」です。これは介護保険の施設サービス(介護保険3施設・介護医療院)やショートステイを利用する人で、所得や預貯金の額が一定以下の人を対象に、居住費や食費の限度額を定め、費用負担を軽減するものです。
補足給付を受けるには、世帯および配偶者が市区町村民税非課税・預貯金等の金額が基準額以下であり、市区町村から「介護保険負担限度額認定証」の交付を受けることが必要です。
出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社
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