高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて

親が施設から出たいと言ったら?

本人の意思と客観的状況から「出たい」理由をまず明らかにして、出なくてよい対策を見つけることが先決です。

環境・サービスなど、施設に不満が生じる場合も

 さまざまな苦労を経て、せっかく入居できた施設でも、退去せざるを得なくなるケースもあります。入居者の心身状態の変化に対応できなくなるほか、入居してみて「自分には合わない」と感じる場合もあるでしょう。これは情報収集や検討が不十分で、自分に合った施設を探しきれずに、入居を決めてしまうことが原因のひとつです。実際、入居してからほかの施設へ転居しているケースも見られます。

施設を出たい原因は、施設と一緒に解決を試みる

 入居後に「施設を出たい」「家へ帰りたい」という話が出たら、その理由を確認しましょう。原因を解決するのは難しいかもしれませんが、まずは施設のスタッフや運営会社に相談することが重要なポイント。施設の生活相談員やケアマネジャー、施設長などは、大勢の利用者に対してさまざまな問題を解決するプロといえます。そのためにも、入居前にトラブル事例や対処法などを詳しく聞いておく必要があるのです。

退去・転居とならないように、十分なチェックと検討を

 どうしても解決できない場合、自主的な退去を検討することになります。要介護の人の場合、自宅に戻ることは生活上難しいですから、ほかの施設への転居を考えます。しかし、また住み替え先を探さなければなりませんし、入居者本人にも環境の変化による影響が及びます。さらなる住み替えは本人にも家族にも大きな負担となるので、そうならないよう「本人に合うか」「ずっと住み続けられるか」のチェックと検討を十分に行って入居することが、何より肝心です。

各施設の退所者における退所先

◇特別養護老人ホームの退所者における退所先

 1.死亡 74.6%、2.医療機関 18.7%、3.特別養護老人ホーム 2.1%、4.自宅 1.2%、5.介護医療院 0.8%、6.有料老人ホーム 0.4%、7.介護老人保健施設 0.3%、8.その他の社会福祉施設 0.2%、9.養護老人ホーム 0.1%

◇有料老人ホームの退所者における退所先

 1.死亡 63.7%、2.医療機関 13.1%、3.特別養護老人ホーム 6.8%、4.自宅 5.6%、5.有料老人ホーム 4.7%、6.サービス付き高齢者向け住宅 0.7%、介護医療院 0.7%、7.その他の社会福祉施設 0.4%、8.認知症グループホーム 0.2%、9.軽費老人ホーム 0.1

◇認知症グループホームの退所者における退所先

 1.死亡 39.7%、2.医療機関 24.4%、3.特別養護老人ホーム 21.3%、4.自宅 3.8%、5.介護老人保健施設 3.3%、有料老人ホーム 3.3%、7.介護医療院 1.4%、8.認知症グループホーム 1.3%、9.サービス付き高齢者向け住宅 0.5%、10.その他の社会福祉施設 0.3%、11.養護老人ホーム 0.2%

◇軽費老人ホームの退所者における退所先

 1.介護老人保健施設 37.1%、2.死亡 14.9%、3.医療機関 14.2%、4.有料老人ホーム 10.0%、5.特別養護老人ホーム 8.8%、6.自宅 4.6%、7.サービス付き高齢者向け住宅 4.5%、8.認知症グループホーム 3.3%、9.その他社会福祉施設 0.5%、10.介護医療院 0.4%、11.養護老人ホーム 0.3%

※【出典】独立行政法人福祉医療機構「令和4年度(2022年) 施設・居住系サービス事業者運営状況調査報告書」(令和5年3月(2023年3月)公表)

出典:岡本弘子『高齢者施設の費用・選び方・手続きのすべて』ナツメ社​